2021-01-01から1年間の記事一覧
ダートを抜けてコンビニに停車すると、トシさんが「また水買わなきゃ」と降車しました。 「もぉ、せっかく用意してたのにぁ」とボヤくトシさんに、軽く笑ってしまいます。 ダート途中でトシさんの積載からペットボトルが落下し、蓋が開いて中の水が全てこぼ…
10月後半の日曜日。 寒い寒いと言いながら集合場所に到着した私とヨシさんは、 「さすがにまだ誰も来てないね~」 と言いながらバイクを停めました。 集合時間の40分も前に着いたのです。 「俺ちょっと、トイレに行ってくるわ」 「あ、うん」 ヨシさんがトイ…
霧の中──。 過去何度か走った、御荷鉾林道のダートを走り切ります。 霧のせいで視界も悪く、前日の雨で多少ぬかるんではいましたが、タイヤが取られることもなく落ち着いて走り抜ける事が出来ました。 舗装路に出ると坂を上り、御荷鉾山展望台へと向かいます…
国道254号線を走り進めます。 陽が高くなって来る時間帯ですが、空はどんより曇っており気温もさほど上がりません。 「今日は天気大丈夫ですかね~?」 暗い空を見上げながら私が言うと、 「一応、降らない予報ではありましたが」 あきにゃんさんが応えまし…
インターを降りて待ち合わせ場所に到着すると、駐輪されている一台のオフロードバイクが目に止まりました。 あ、もしやあの人かな? そう思いつつも、もし声を掛けて違ったら恥ずかしいので、少し離れた所に駐輪します。 降車してヘルメットを外していると、…
「こじかさん、手足がガチガチだからさ」 「あ、はい」 ベンチに腰掛けたKさんが、煙草を燻らせながら話し掛けてきました。 「今度、立ち乗りでビョンビョンさせてみるといいですよ。あと、左右にハンドル切りながら走ってみたり。 それやりながらタイヤが地…
二つ目の集合場所で全員が揃うと、改めて挨拶を交わしました。 本日の参加者は、全部で7人だそうです。 「ところで、こじかさんはどのくらいのレベル?」 Kさんが聞いてきました。 「…ん?」 私が公園お砂場レベルより低い事は散々伝えてある筈なのに、と首…
オフロード仲間が欲しい──。 私の中に、その願望はずっと燻っていました。 出来れば、近場で一緒にひょいと林道に入り込み、共に景色を堪能し、協力し、笑い合えるような。 そんな仲間が欲しいと。 ですが、それは叶わぬ夢物語なのではないかと思い始めてい…
「私、前から行ってみたかった所があって」 ヨシさんに切り出すと、 「うんうん、どこ?」 身を乗り出して聞いて来ました。 「『大福寺』っていうお寺で…」 スマホで画像を見せながら言います。 「そこ、『崖観音』っていう、切り立った崖の途上に観音堂が建…
「この先にも、もうひとつトンネルがあるみたいだよ」 ヨシさんの言葉通り、進んでほどなくすると、もう一つのトンネルが姿を現しました。 「あ、ここからダートだ」 「ホントだ」 「しかも結構ヌメってるよ。滑るから気を付けてね」 「う、うん」 ヨシさん…
古道に設えられた、魅惑的なトンネルが好き──。 ヨシさんが以前そう語っていました。 思えば確かに。 ヨシさんとのツーリングではトコトコと細道に入り込み、その先のひっそりとしたトンネルを見付けてはくぐり抜けてきたのでした。 私がそのトンネルに目が…
ぴすけさんが急斜面を上り切ったのを見届けた後。 「では、我々も戻りますか」 よしださんが向きを変えようとした時、 「ちょっと、私もやってみようと思います」 ヨシさんが言い出しました。 ──え、ヨシさんも行くの? よしださんも同じように感じたようで…
「では午後の練習に入りますが。皆さん、何かやりたいことはありますか?」 昼食後、よしださんが全員を見渡しながら訊ねました。 とにかく基礎技術を向上させたい私は「いえ、特には」と首を傾げましたが、ぴすけさんはモトクロスコースが走りたいと答え、ヨシ…
置かれたパイロンの外側をグルグル走ります。 やがてぴすけさんがスタンディングで運転し始めるとヨシさんも立ち上がったので、私もそれに倣いました。 「ちうさん、もっと背筋を真っ直ぐに」 よしださんから教示されます。 「はい」 返事をしたものの、どういっ…
以前こちらのブログで『ライダーの在るべき姿 ~中編』を公開したところ、たくさんの方々からオフロードスクールのお勧めや、練習の仕方などのアドバイスをいただきました。 ↓『ライダーの在るべき姿』オフロード編 https://qmomiji.hatenablog.com/entry/20…
御荷鉾山のダートは、私がよく知るいつものそれでした。 「おぉっ。走りやすい」 ヨシさんが言うように、御荷鉾山の砂利道は初心者にも優しいフラットなのです。 懸念していた雨によるぬかるみも、大きな陥没もありません。 時々水溜まりはありますが、バイ…
あれ──? あれってもしや、よねさん? 関越自動車道の下り線を走っていた私は、前方のオフロードバイクを見つめながら自信なさげに首を傾げました。 前方にバイクが車線変更して来たのは認識していたのですが、それが私と同じセローである事に気付いたのは数…
「はぁ~、なんかやり遂げた感!」 私が言うとヨシさんも、 「確かに~。正直、今日はもうオフロードはお腹いっぱいな感じ」 と苦笑しました。 「俺、既にあちこち筋肉痛だよ」 「え、そうなの?」 意外でした。 アメリカンバイクでオフロードを走ってしまう…
最初はごく普通の峠道でした。 道幅も狭く勾配はあるものの、ひび割れながらもちゃんとした舗装路だったのです。 しばらく進むと、 「砂利が始まるよ~」 ヨシさんの言う通り、ダートが始まります。 緊張しながら私もスタンディング姿勢を取って砂利の上へと…
神奈川県と千葉県とを結ぶアクアラインの途上にあるパーキングエリア、『海ほたる』。 そこにセロー2台を並べて駐輪し、軽く休憩を取ることにします。 まだ朝早い時間の為、営業しているお店は殆どありません。 「ちうさん、どうしたの?」 ショップガイドに…
「やぁ~、気持ちいいなぁ」 風を感じながら私は、Oさんのセリフに同意しました。 オフ車とSSは確かに特性は違いますが、走る速度やツーリング形態を合わせればちゃんと一緒に楽しめるのだなぁと思い、嬉しくなります。 OさんのNinjaはカーブの度にバンクし…
「なぁ、明日雨降らないみたいだし、バーガー食いに行かない?」 不意に聞こえてきた知人男性の呼びかけは、彼の隣にいる、別の男性へと向けられたものでした。 「お、そうなの?」 「そう。予報だと、夕方まで天気持つみたいだよ。行く?」 「いいねぇ。行…
今回の記事で前編中編を公開したところ、私の想像を遥かに越える反響が起こりました。 あたたかいお言葉を寄せて下さった皆様方、本当にありがとうございました。 私は件のお二人を、糾弾するつもりは一切ありません。 結局私は無事故で過ごせましたし、バイ…
縁あってオフロードバイクに乗っているのですから、せっかくならオフロードを走りたいと考えていました。 でもヨシさんのバイクはアメリカンです。 オフロードに付き添ってもらうわけにはいきません。 初心者が、まして女性が、一人でオフロードに入るのは絶…
あきにゃんさんとの、御荷鉾山林道ツーリングの帰り道──。 高速道路で大型トラックの後ろを走りながら私は、一人つらつら考えていました。 今日ダートを走り終わった後、あきにゃんさんは言いました。 「ここくらいの道を恐怖心なく走れるようになってから、…
私のセローも砂利道へと入って行きます。 …あ 不意に、転倒した時の感覚が蘇りました。 私自身の制御ではどうにもならず、ほんの一瞬で天地がひっくり返った、あの感覚です。 恐怖に捉われそうになる心を、なんとか理性で押さえ付けます。 「大丈夫…」 自分…
「実のところ」 前方を走っているあきにゃんさんが、静かに切り出しました。 「今走っている道が合ってるのかどうか、自信がありません」 「あはは、マジですかぁ」 最初の目的地である秩父高原牧場を目指しながら、私とあきにゃんさんはそんな会話を交わし…
「セローを買おうと思う」 ヨシさんから打ち明けられたのは、5月GW明けの平日のことでした。 驚くのも束の間、そのわずか3日後にヨシさんはファイナルエディション購入契約を結び、その約2週間後、28日には納車の運びとなりました。 とんとん拍子に進んでい…
県道11号を進んで埼玉県に入ると、渡良瀬川遊水池の脇を抜けます。 荒川に差し掛かると、川沿いの小道へと入っていきました。それは国道の渋滞を回避する為でもありましたが、純粋にその道を楽しみたかったからでもあります。 埼玉県と東京都を流れる荒川は…
県道15号線は最初、ごく緩やかな峠道でした。滑らかな走りに安堵します。 ですが、 「まだまだこれからだよ〜」 とヨシさんが言う通り、どんどん道幅が狭くなっていきました。 そうして走り進んでいくと、 「次に来るカーブ、ほぼ180°ターンのピストンカーブ…