アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

魔法の国~大阪卒業旅行 その④

私とAさん、そしてSくんがベンチに腰掛け休んでいると、グループLINEに、 『この行列、30分以上かかりそう。そうなると11時を過ぎるから飲食店に入るのはもう厳しいかも』 とタロウからメッセージが流れて来ました。 タロウの事前の下調べで、USJの混雑時は…

クリア~大阪卒業旅行 その③

パーク内に足を踏み入れた途端、ダッシュで園内に向かう人達が多数いましたが、私達は端っこに寄ってタロウの整理券申請手続きが済むのをじっと待ちました。 「あ、ニンテンドーワールドの整理券取れた」 「え、取れたの!? ホントに?」 スマホを操作するタロ…

憧憬~大阪卒業旅行 その②

翌、早朝6時。 ホテルの一室で簡素な朝食を済ませた私とタロウは、大阪駅目指して歩き始めます。 梅田と呼ばれるその辺り一帯は昼夜は多くの人々で賑わうのですが、まだ早朝の為かひっそりと静まり返っていました。 大阪駅から環状線内回りに乗り、西九条駅…

郷愁~大阪卒業旅行 その①

「大阪…」 「…だね」 新大阪駅のホームに降り立った私と息子は、半ば放心状態でそう呟きました。 立ち止まっている私達に後ろから「チッ」と舌打ちされたので、「あ、すみません…」と脇にどくと、背広服姿の男性が苛立ったように追い抜いて行きました。 とりあえず進…

時代の変遷

あ、江ノ電だ。 ミラーを確認すると、後方から江ノ電こと江ノ島電鉄の車両が近付いて来ているのが分かりました。 国道467号線。 そこは街中を走る江ノ電と一般車両とが一緒に走る道路なのです。 どうしよう、と一瞬考えます。 これまでにも江ノ電と並走した…

江ノ島デートツーリング~後編

狭い階段道の道端には、店屋が立ち並んでいます。 「お団子美味しいですよ~。食べて行きませんか」 「お飲み物だけでもどうですか~?」 各店の店員さんから呼びかけられますが、私達は曖昧な笑みを浮かべてそこを通り過ぎていきます。 階段の踊り場からは…

江ノ島デートツーリング~前編

11月下旬。 朝晩が冷え込むようになりました。 目覚める時刻になっても、それまで身体をぬくぬくとあたためてくれていたお布団から抜け出すのには、中々の気合いを要する季節となります。 でも、今日の朝は違いました。 アラームの鳴る前からスッキリと目が…

バイク聖地での洗礼~後編

次なる目的地は、栃木県那須塩原市にあるライダーズカフェ『BOBBY』さん。 広い敷地の駐車場と開放的な店内の空間、そしてボリュームのあるフードメニューが高評価のお店です。 ですが、ライダーズカフェを名乗るように、多くのライダー達が集まるのには、店…

バイク聖地での洗礼~前編

それは今から3年前。 2020年11月18日。 私がバイクに乗り始めてちょうど一年が経とうという頃の事でした。 私とヨシさんは、高速道路を走らせ栃木へと向かいます。 「道は順調だね~」 「そうだねぇ。渋滞もしてないし良かった」 セローの走行速度に合わせ、…

紅葉のダートを走り抜け~御荷鉾ツーリング

「まさかあそこで渋滞に巻き込まれるとは」 『だねぇ。でも、集合時間にはなんとか間に合いそうだよ』 「そうだね~良かった」 10月下旬の土曜日、セローを走らせながら私とヨシさんはそんな会話を交わしました。 集合時間は8時です。 その40分も前に着くく…

ぬかるみを越え

あれ? 晴れてる…。 10月半ば、土曜日の朝。 ゆっくりと目覚めた私はカーテンを開け、いの一番にそう思いました。 ここのところ、週末はほとんど雨でした。 今日も雨予報ではなかったものの雨雲マークの曇り予報、降水確率は30%でした。金曜日までの霧雨が、…

ある雨上がりの朝に

「明日はお昼はどうするの?」 土曜日の夕飯時。 息子のタロウ(仮名)が鶏の竜田揚げを頬張りながら聞いてきました。 何か予定があって別々に食べるのか、用意してくれるのか、はたまた自分が作っておいた方がいいのか。予めハッキリさせておかないと、自身の…

富士林道ツーリング~後編

ダートを抜けてコンビニに停車すると、トシさんが「また水買わなきゃ」と降車しました。 「もぉ、せっかく用意してたのにぁ」とボヤくトシさんに、軽く笑ってしまいます。 ダート途中でトシさんの積載からペットボトルが落下し、蓋が開いて中の水が全てこぼ…

富士林道ツーリング~前編

10月後半の日曜日。 寒い寒いと言いながら集合場所に到着した私とヨシさんは、 「さすがにまだ誰も来てないね~」 と言いながらバイクを停めました。 集合時間の40分も前に着いたのです。 「俺ちょっと、トイレに行ってくるわ」 「あ、うん」 ヨシさんがトイ…

オフ車ならでは~御荷鉾林道ツーリング 完結

霧の中──。 過去何度か走った、御荷鉾林道のダートを走り切ります。 霧のせいで視界も悪く、前日の雨で多少ぬかるんではいましたが、タイヤが取られることもなく落ち着いて走り抜ける事が出来ました。 舗装路に出ると坂を上り、御荷鉾山展望台へと向かいます…

馴染みダートの別の顔~御荷鉾林道ツーリング②

国道254号線を走り進めます。 陽が高くなって来る時間帯ですが、空はどんより曇っており気温もさほど上がりません。 「今日は天気大丈夫ですかね~?」 暗い空を見上げながら私が言うと、 「一応、降らない予報ではありましたが」 あきにゃんさんが応えまし…

回復祝いに大冒険~御荷鉾林道ツーリング①

インターを降りて待ち合わせ場所に到着すると、駐輪されている一台のオフロードバイクが目に止まりました。 あ、もしやあの人かな? そう思いつつも、もし声を掛けて違ったら恥ずかしいので、少し離れた所に駐輪します。 降車してヘルメットを外していると、…

初めてづくしの高揚~箱根林道ツーリング 完結

「こじかさん、手足がガチガチだからさ」 「あ、はい」 ベンチに腰掛けたKさんが、煙草を燻らせながら話し掛けてきました。 「今度、立ち乗りでビョンビョンさせてみるといいですよ。あと、左右にハンドル切りながら走ってみたり。 それやりながらタイヤが地…

震える先の丘~箱根林道ツーリング②

二つ目の集合場所で全員が揃うと、改めて挨拶を交わしました。 本日の参加者は、全部で7人だそうです。 「ところで、こじかさんはどのくらいのレベル?」 Kさんが聞いてきました。 「…ん?」 私が公園お砂場レベルより低い事は散々伝えてある筈なのに、と首…

生れ出づるおののき~箱根林道ツーリング①

オフロード仲間が欲しい──。 私の中に、その願望はずっと燻っていました。 出来れば、近場で一緒にひょいと林道に入り込み、共に景色を堪能し、協力し、笑い合えるような。 そんな仲間が欲しいと。 ですが、それは叶わぬ夢物語なのではないかと思い始めてい…

行かず進まず~トンネルツーリング 完結

「私、前から行ってみたかった所があって」 ヨシさんに切り出すと、 「うんうん、どこ?」 身を乗り出して聞いて来ました。 「『大福寺』っていうお寺で…」 スマホで画像を見せながら言います。 「そこ、『崖観音』っていう、切り立った崖の途上に観音堂が建…

冒険後の安らぎ~トンネルツーリング②

「この先にも、もうひとつトンネルがあるみたいだよ」 ヨシさんの言葉通り、進んでほどなくすると、もう一つのトンネルが姿を現しました。 「あ、ここからダートだ」 「ホントだ」 「しかも結構ヌメってるよ。滑るから気を付けてね」 「う、うん」 ヨシさん…

漆黒の陽光~トンネルツーリング①

古道に設えられた、魅惑的なトンネルが好き──。 ヨシさんが以前そう語っていました。 思えば確かに。 ヨシさんとのツーリングではトコトコと細道に入り込み、その先のひっそりとしたトンネルを見付けてはくぐり抜けてきたのでした。 私がそのトンネルに目が…

決意新たに~猿ヶ島練習会 完結編

ぴすけさんが急斜面を上り切ったのを見届けた後。 「では、我々も戻りますか」 よしださんが向きを変えようとした時、 「ちょっと、私もやってみようと思います」 ヨシさんが言い出しました。 ──え、ヨシさんも行くの? よしださんも同じように感じたようで…

土埃の煌めき~猿ヶ島練習会③

「では午後の練習に入りますが。皆さん、何かやりたいことはありますか?」 昼食後、よしださんが全員を見渡しながら訊ねました。 とにかく基礎技術を向上させたい私は「いえ、特には」と首を傾げましたが、ぴすけさんはモトクロスコースが走りたいと答え、ヨシ…

教官の信念~猿ヶ島練習会②

置かれたパイロンの外側をグルグル走ります。 やがてぴすけさんがスタンディングで運転し始めるとヨシさんも立ち上がったので、私もそれに倣いました。 「ちうさん、もっと背筋を真っ直ぐに」 よしださんから教示されます。 「はい」 返事をしたものの、どういっ…

まずははじめの一歩から~猿ヶ島練習会①

以前こちらのブログで『ライダーの在るべき姿 ~中編』を公開したところ、たくさんの方々からオフロードスクールのお勧めや、練習の仕方などのアドバイスをいただきました。 ↓『ライダーの在るべき姿』オフロード編 https://qmomiji.hatenablog.com/entry/20…

パラつく雨にも~御荷鉾山林道 後編

御荷鉾山のダートは、私がよく知るいつものそれでした。 「おぉっ。走りやすい」 ヨシさんが言うように、御荷鉾山の砂利道は初心者にも優しいフラットなのです。 懸念していた雨によるぬかるみも、大きな陥没もありません。 時々水溜まりはありますが、バイ…

初めまして、ダートです~御荷鉾山林道 前編

あれ──? あれってもしや、よねさん? 関越自動車道の下り線を走っていた私は、前方のオフロードバイクを見つめながら自信なさげに首を傾げました。 前方にバイクが車線変更して来たのは認識していたのですが、それが私と同じセローである事に気付いたのは数…

どんな道でも~千葉、林道デビュー 完結

「はぁ~、なんかやり遂げた感!」 私が言うとヨシさんも、 「確かに~。正直、今日はもうオフロードはお腹いっぱいな感じ」 と苦笑しました。 「俺、既にあちこち筋肉痛だよ」 「え、そうなの?」 意外でした。 アメリカンバイクでオフロードを走ってしまう…