「まさかあそこで渋滞に巻き込まれるとは」
『だねぇ。でも、集合時間にはなんとか間に合いそうだよ』
「そうだね~良かった」
10月下旬の土曜日、セローを走らせながら私とヨシさんはそんな会話を交わしました。
集合時間は8時です。
その40分も前に着くくらいに余裕を持って合流していたというのに、途中、高速道路の事故渋滞に巻き込まれ、時間がギリギリになってしまったのです。
待ち合わせ場所が見えると、よねってぃさんが手を振ってくれています。
「おはようございまーす」
私とヨシさんが挨拶すると、
「おはようございます。どうも、今日はよろしくお願いします」
とよねってぃさんがぺこりとお辞儀をしてくれました。こちらこそよろしくお願いします、とお辞儀を返します。
「あきにゃんさんはまだ来てないんですねぇ」
給油しながらヨシさんが聞くと、「あ、来た来た」とよねってぃさんが道の向こうを指さしました。
確かに、あきにゃんさんの赤いCRFがこちらに向かって近付いて来ています。
隣に滑り込んで来たあきにゃんも、バイクを降りて
「今日はよろしくお願いします」
と挨拶してくれました。
今日走るメンバー4人が全員揃いました。
給油を終えると4人でインカムを繋ぎ、よねってぃさんを先頭に走り始めました。
「今日は晴れて良かったですね~」
私が言うと、
『そうですねぇ。展望台からの景色も綺麗に見えそうです』
と同意の声が上がります。
トイレ休憩で立ち寄ったダムも、青空が映えていました。
街中を抜け、やがて山道に入り緩やかなカーブを軽快に走り抜けます。
『落石がありますよ~。気を付けて』
「はーい」
よねってぃさんやあきにゃんさんが警告してくれた通り、あちこち大きな石が転がっていました。
道路のひび割れや陥没等、気を付けながら走ります。
いよいよダートに突入です。
私とヨシさんはタイヤの空気を抜きました。
「はぁ~緊張します」
私が言うと、
「まぁ、ゆっくり行きましょう」
とあきにゃんさんが笑ってくれました。
久しぶりのダートは、想像の何倍も怖く感じました。
私の記憶では御荷鉾山は比較的フラットなイメージだったのですが、そもそもツーリング自体が珍しくなっていた私にとって、ダートの難易度が高くなっていたのでしょう。
何度か転倒しそうになりましたし、ハンドルを取られてガードレールにぶつかりそうにまでなりました。
『うわ~景色が綺麗ですね~』
『そうですねぇ。今日は山もくっきり見えます』
私以外の3人は、景色を堪能し会話を楽しみながら走っていたというのに、私にはそんな余裕もありませんでした。
『あれ? ちうさん、インカム繋がってる?』
私が無言過ぎて、そう聞かれてしまいました。
「繋がってます! ごめんなさい、今話せる余裕がないですっ」
私の必死な様相に3人から笑い声が上がりました。
いつもの休憩所にバイクを停めます。
「御荷鉾山ってこんなでしたっけ…なんか難易度上がってません?」
息切れしながら私が聞くと、
「いや、いつもの御荷鉾山ですよ」
あきにゃんさんが苦笑しながら応えました。
やっぱり、しばらく乗っていないと感覚が鈍るんだなと実感します。
「それより、紅葉が綺麗ですよ。あの下にバイクを並べて写真撮りませんか?」
「うわぁ~ホントですね。御荷鉾山は何度か来ていますけど、紅葉してるのは初めて見ました」
ヨシさんもよねってぃさんも頷いています。
「こんなに綺麗に紅葉するのは珍しいんですよ。僕が去年来た時は上の葉が落ちてしまって、下の葉は青いままでした」
御荷鉾山がホームコースのあきにゃんさんがそう言います。
「へぇ~。そうなんですね」
同じ場所にある同じ木だというのに、毎年紅葉の仕方が違うのは面白いと感じました。
今年は綺麗に紅葉している御荷鉾山に来れて本当に良かった。
心からそう思えました。
お誘いしてくれた仲間達に感謝です。