アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

回復祝いに大冒険~御荷鉾林道ツーリング①

インターを降りて待ち合わせ場所に到着すると、駐輪されている一台のオフロードバイクが目に止まりました。

 

あ、もしやあの人かな?

 

そう思いつつも、もし声を掛けて違ったら恥ずかしいので、少し離れた所に駐輪します。

降車してヘルメットを外していると、真隣に赤いセローが滑り込んで来ました。

「おはよー」

シールドを上げてそう声を掛けてきたのはヨシさんです。

「あ、ヨシさんおはよう」

「ねぇ、あちらのオフ車ってさ…」

ヨシさんが先程のオフロードバイクを見遣りながら切り出します。私と同じように感じていたようです。

「うん、私もそうなんじゃないかと思った」

でも声を掛けて違ったら恥ずかしいと思って、と加えると、

「じゃあ俺が声掛けてくるよ」

と歩き去って行きました。

 

程なくして、ヨシさんが先程のオフライダーさんを連れて戻ってきました。

「やっぱりそうだったよ」

「どうも、本日はよろしくお願いします」

バイクを押しながらやって来たのは、本日の参加者の一人、『ともさん』です。温和な笑顔を浮かべて頭を下げました。

「はい、今日はよろしくお願いします。ちうと申します」

ともさんは、ヨシさんとも挨拶を交わしています。

「お二人とも、オフロード歴は長いんですか?」

ともさんが、私とヨシさんとを交互に見ながら質問します。

「いえ全然…」

私が答えかけると、

「いえいえ。林道ツーリングは、今日でまだ3回目なんですよ」

とヨシさんが答えました。

え、と少し驚きますが、よく考えてみると確かに、ヨシさんの林道ツーリングはまだ3回目です。

猿ヶ島練習会や、オンロードツーリングで思いがけずダートを走ってしまったことは多々ありますが、きちんと林道ツーリングを目的に出たのはまだ少ないのです。

「あ、なら私と同じです」

ともさんがそう言いました。

「私もまだ3回くらいしか林道を走ってないので」

 

お二人が和やかに話し始めます。

バイク歴はともかく、オフロード歴は二人とも同じくらいのようです。

 

ん?

 

そこで気付きたくない事実に思い当たります。

あれ?

じゃあ、この3人の中では一応、私が一番オフ歴長いの…?

 

まだまだ『初心者面』をしていたい私は愕然としますが、お二人のトークは和やかに続きます。

「ヨシさんのバイクはピカピカですよねぇ。ナンバーも綺麗です」

ともさんのセリフを受けたヨシさんが、

「はい、ともさんのナンバーも。でもオフ車乗りとして綺麗なナンバーはまだまだらしいですよ。見て下さいよ、ちうさんのこのナンバーを!」

ヨシさんが私のセローを指さします。

「あ、ホントだ。ナンバーがひしゃげてますね」

「いや…これは私が下手だから転倒しただけで」

「いやぁ、ちうさんは攻めるからなぁ」

「え、そうなんですか? 」

「いやいやいや、違います! 違いますから」

 

 

誤解を解くべく必死に頭を回転させ始めたところ、

「あ、あきにゃんさんが来ましたよ」

ともさんのセリフにより、ふっと我に返りました。

 

 

手を振りながらあきにゃんさんが、CRFを私達のそばに駐輪させます。

 

 

 

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「おはようございます」

「おはようございまーす」

ヘルメットを脱いだあきにゃんさんに、口々に挨拶を交わしました。

 

「ところで…」

私が恐る恐る口にしました。

「あきにゃんさん、もう大丈夫なんですか?」

「はい多分」

…いや多分って。

「あ、そうですよ肩!」

ヨシさんも思い出したように言いました。

「もうバイクに乗って大丈夫なんですか?」

ともさんからも質問が出ます。

「まぁ、バイク自体は乗っていたので。それより」

下ろしたリュックを指さしながら苦笑します。

「リュックがキツいですねぇ。肩に食い込みます」

「あぁっ! そりゃそうですよ」

 

 

あきにゃんさんは林道ツーリング時の転倒により肩を傷めてしまい、数ヶ月間バイクをお休みしていたのです。

数日前に『復活』という文字と共に、林道ツーリングしている様子はツイートされていたのですが、詳しい容態までは分かりませんでした。

そのため、今回林道ツーリングにお誘いいただいた時は本当に嬉しく感じました。

 

「まぁ、無理せず休み休み行きますよ」

「そうですね、それがいいです」

あきにゃんさんのセリフに応えながらも私は、果たしてあきにゃんさんに『休み休み』などというツーリングが出来るのだろうかと、内心疑問を抱きました。

 

 

あきにゃんさんとヨシさん、私の3人でインカムをペアリングします。

「なんか…すみません」

ペアリングに手間取ったので、ともさんに向けぺこりと頭を下げます。ともさんはインカムを持っていなかったのです。

「いえいえ、いいんですよ」

ともさんの朗らかな笑顔が有難かったです。

 

 

「では、出発しまーす」

「はーい」

 

マスツーリングの始まりはいつもワクワクします。

今日はどんなイベントが待っているんだろう? どんな景色に出逢えるんだろう?

 

 

しかも今日の目的地は『御荷鉾山』です。

走り慣れた林道に、心も軽やかでした。

 

でもこの時の私には想像もつきませんでした。

行き慣れた場所であっても、決していつもと同じ顔ではないのがオフロードというもの。

 

 

この日、私達には思いもよらぬ刺激的なツーリングが、そう、大冒険が待っていたでした。