それは5月のこと──。
初めて顔を合わせて林道ツーリングをした、あきにゃんさん。そしてよねってぃさんと私の三人。
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その二週間後、同じメンバーでまた一緒に走ることになりました。
前回のツーリングで、インカムをペアリング出来なかったことが心残りだった私達。
どうすれば繋げられるのかをそれぞれ調べ、三人のグループラインで話し合ってきました。
でもそれでもよく分からなかったので、私にインカムを渡してくださった、ヨシさんに相談してみます。
『他社同士でのペアリングは難しいですからね』と前置きした上で、ヨシさんが快く説明して下さいます。
親切にしているのは自分の方なのに、何故か『長くなってすみません』『分かりにくくてごめんなさい』と腰の低いヨシさん。
そんな丁寧に書かれた説明文を読みこむも、クエスチョンマークの飛び交う私の脳内に早々と見切りをつけ、ヨシさんが送ってくれた上記説明文を三人のグループラインにコピーして送信します。
ですがそれに留まらず、インカムを複数台持っているヨシさんが、実際にS社とB社2台のインカムのペアリング方法を実演し、動画に収めて送って下さいました。
その動画も送信しました。
『なんか、出来るような気がしてきました』
よねってぃさんが言います。
『おぉ、それは頼もしい。じゃあ当日よろしくお願いします』
と私とあきにゃんさんとで言い合います。
前日の夜、『すみません、明日なんですがもう一人増えてもいいですか?』
とあきにゃんさんからLINEが来ます。
『勿論ですよ〜』
私が送ると、
『どなたですか?』
とよねってぃさんが聞いています。
『はちさんという方です。私と同じCRFで来るそうです』
『了解しました〜』
『はちさんのインカムが中華製らしいので、ペアリング出来るか心配ですけどね』
『…』
不安要素を残しつつ、急遽四人での林道ツーリングが決行の運びとなったのです。
当日の朝。
高速道路を使って現地まで向かい、集合場所に到着します。
「おはようございまーす」
「あ、おはようございます。今日はちょっと寒いですね」
あきにゃんさんが応えます。
前回のツーリングでは暑いくらいの快晴でしたが、今日は曇り空で気温も低めでした。
「では早速、繋いでみますか」
よねってぃさんが言います。
まず、私とよねってぃさんとのインカムをペアリングしてみます。
「あーあー。聞えますか?」
ちゃんとスピーカーを通してよねってぃさんの声が聞えます。
「聞えまーす」
私が応えたことで、よねってぃさんの方も繋がったと確認したようです。
ここでよねってぃさんが、先日私が送ったヨシさんからのレクチャー動画を再生します。
「えっと、ここでちうさんは電源を切って下さい」
私は電源を切り、次はよねってぃさんとあきにゃんさんとがペアリング。
お二人のが繋がったのを確認し、私の電源を付けてみます。
ところが、お二人のは繋がっているというのに、私のが全く聞こえません。私の声も届いていないようでした。
「えぇ〜? なんでですかね?」
もう一度三人で、ヨシさん動画を見返します。
「よし、もう一度やりましょう」
再度、私とよねってぃさんとのペアリング。
そうこうしている間に、もう一台のCRFがやって来ました。
「初めまして。はちです」
降り立った男性と初対面の私は挨拶を返します。
「あ、初めまして〜。ちうです。今日はよろしくお願いします」
「急に参加させてもらっちゃってすみません」
「いえ、とんでもないです」
よねってぃさんとのペアリングが完了し、私の電源を落とすや、またもあきにゃんさんとよねってぃさんとのペアリングです。
傍らでは、本日何度目か分からないヨシさん動画を再生させています。
「繋がりました。ちうさん、電源入れてみてください」
「はい」
緊張しながらインカムの電源をオンにします。
先程まではここまで出来たのです。でも繋がりませんでした。次はどうなのかとビクビクでした。
「あーあー。聞えますか?」
よねってぃさんの声が、ハッキリとスピーカーで流れてきました。
「聞えます! 私の声は聞こえますか?」
やや興奮気味に応える私。
「あ!聞えます聞えます!」
「私も聞えます」
あきにゃんさんの声もハッキリと聞き取れました。
「やった! 繋がった! 初めて三人で繋がりましたね」
この時点で感動してしまう私達三人。
ですが、今日はもう一人いらっしゃいます。
私とよねってぃさんが、インカムの電源を切ります。
次はあきにゃんさんとはちさんとが、インカムをペアリングしました。お二人が繋がるや、よねってぃさんと私も電源をオンにします。
緊張が高まります。
「聞えますか〜?」
「えっすごい! 聞こえます!」
「聞えます聞えます」
よねってぃさんと私、あきにゃんさんの声が響き、
「俺も聞こえる」
はちさんの声もちゃんとクリアに聞こえてきました。
「凄い! ちゃんと四人で繋がりましたよ!!」
ちょっと感動して泣きそうになる私。
全員でバンザイをし、拍手まで沸き起こります。
まだツーリング開始前だというのに、既に感動のフィナーレを迎えたかのような盛り上がりように、全員で笑い出してしまいました。
「では、出発します」
前回同様、あきにゃんさんが先導をして下さいます。
あきにゃんさんの次がはちさん、そして私、一番後ろがよねってぃさんです。
「はーい」
私含む全員の声が上がります。
「うわっ、聞こえるわ。なんか気持ち悪っ」
はちさんが言ったので、笑ってしまいました。
おそらく、インカムを複数人で繋げるのはこれが初めてなのでしょう。何人もの声が同時に聞こえる感覚に不慣れなのかもしれません。
私も、四人以上で同時に繋がったのは初めてなのでワクワクします。
やがてゆっくりと走り出したあきにゃんさんに続き、3台のオフロードバイクも走り出しました。
実は、こうしてインカムを繋げられたことにより、この日何度も危険を回避出来ました。
それは予想もしなかった状況に見舞われたからなのですが、この時の私はただ、ツーリング開始による胸の高鳴りに身を任せ、アクセルを開くのみでした。
そして──。
この日ツーリングを終え帰宅した私は、いの一番にヨシさんへとメッセージを送ります。
『ツーリングより無事帰宅いたしました。ありがとうございました、ヨシさんのお陰で全員とインカムを繋げることが出来ました』
『お疲れ様です。ライダーとして、ライダーのお役に立てて嬉しいです』
実はこの時ヨシさんは、体調不良により歩行も困難な状況に陥っていたのです。
にも関わらず、インカムの繋げ方を親身にレクチャーして下さいました。
それは良かったと喜ぶヨシさんの存在が、本当に有難かったです。
たかがインカム。されどインカム。
一つの文明の利器であり、それがなくともツーリングは成立します。
ですがそれを繋げるために、色んな人達の助力や繋がりたいと願う人達の想いとがあるのです。
しっかりと無線の繋がった四人でのツーリングは、まだ始まったばかりです。