アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

繋がる喜び〜林道マスツー①

それは5月のこと──。

 

初めて顔を合わせて林道ツーリングをした、あきにゃんさん。そしてよねってぃさんと私の三人。

 

https://qmomiji.hatenablog.com/entry/2020/05/21/203013

 

https://qmomiji.hatenablog.com/entry/2020/05/26/230155

 

https://qmomiji.hatenablog.com/entry/2020/05/27/215604

 

その二週間後、同じメンバーでまた一緒に走ることになりました。

 

前回のツーリングで、インカムをペアリング出来なかったことが心残りだった私達。

どうすれば繋げられるのかをそれぞれ調べ、三人のグループラインで話し合ってきました。

でもそれでもよく分からなかったので、私にインカムを渡してくださった、ヨシさんに相談してみます。

 

『他社同士でのペアリングは難しいですからね』と前置きした上で、ヨシさんが快く説明して下さいます。

親切にしているのは自分の方なのに、何故か『長くなってすみません』『分かりにくくてごめんなさい』と腰の低いヨシさん。

そんな丁寧に書かれた説明文を読みこむも、クエスチョンマークの飛び交う私の脳内に早々と見切りをつけ、ヨシさんが送ってくれた上記説明文を三人のグループラインにコピーして送信します。

 

ですがそれに留まらず、インカムを複数台持っているヨシさんが、実際にS社とB社2台のインカムのペアリング方法を実演し、動画に収めて送って下さいました。

 

その動画も送信しました。

 

『なんか、出来るような気がしてきました』

よねってぃさんが言います。

『おぉ、それは頼もしい。じゃあ当日よろしくお願いします』

と私とあきにゃんさんとで言い合います。

 

前日の夜、『すみません、明日なんですがもう一人増えてもいいですか?』

とあきにゃんさんからLINEが来ます。

『勿論ですよ〜』

私が送ると、

『どなたですか?』

とよねってぃさんが聞いています。

『はちさんという方です。私と同じCRFで来るそうです』

『了解しました〜』

『はちさんのインカムが中華製らしいので、ペアリング出来るか心配ですけどね』

『…』

不安要素を残しつつ、急遽四人での林道ツーリングが決行の運びとなったのです。

 

 

当日の朝。

高速道路を使って現地まで向かい、集合場所に到着します。

「おはようございまーす」

「あ、おはようございます。今日はちょっと寒いですね」

あきにゃんさんが応えます。

前回のツーリングでは暑いくらいの快晴でしたが、今日は曇り空で気温も低めでした。

「では早速、繋いでみますか」

よねってぃさんが言います。

 

 

まず、私とよねってぃさんとのインカムをペアリングしてみます。

「あーあー。聞えますか?」

ちゃんとスピーカーを通してよねってぃさんの声が聞えます。

「聞えまーす」

私が応えたことで、よねってぃさんの方も繋がったと確認したようです。

 

ここでよねってぃさんが、先日私が送ったヨシさんからのレクチャー動画を再生します。

「えっと、ここでちうさんは電源を切って下さい」

私は電源を切り、次はよねってぃさんとあきにゃんさんとがペアリング。

お二人のが繋がったのを確認し、私の電源を付けてみます。

ところが、お二人のは繋がっているというのに、私のが全く聞こえません。私の声も届いていないようでした。

「えぇ〜? なんでですかね?」

もう一度三人で、ヨシさん動画を見返します。

「よし、もう一度やりましょう」

 

再度、私とよねってぃさんとのペアリング。

そうこうしている間に、もう一台のCRFがやって来ました。

「初めまして。はちです」

降り立った男性と初対面の私は挨拶を返します。

「あ、初めまして〜。ちうです。今日はよろしくお願いします」

「急に参加させてもらっちゃってすみません」

「いえ、とんでもないです」

 

よねってぃさんとのペアリングが完了し、私の電源を落とすや、またもあきにゃんさんとよねってぃさんとのペアリングです。

傍らでは、本日何度目か分からないヨシさん動画を再生させています。

「繋がりました。ちうさん、電源入れてみてください」

「はい」

緊張しながらインカムの電源をオンにします。

先程まではここまで出来たのです。でも繋がりませんでした。次はどうなのかとビクビクでした。

「あーあー。聞えますか?」

よねってぃさんの声が、ハッキリとスピーカーで流れてきました。

「聞えます! 私の声は聞こえますか?」

やや興奮気味に応える私。

「あ!聞えます聞えます!」

「私も聞えます」

あきにゃんさんの声もハッキリと聞き取れました。

「やった! 繋がった! 初めて三人で繋がりましたね」

この時点で感動してしまう私達三人。

ですが、今日はもう一人いらっしゃいます。

 

私とよねってぃさんが、インカムの電源を切ります。

次はあきにゃんさんとはちさんとが、インカムをペアリングしました。お二人が繋がるや、よねってぃさんと私も電源をオンにします。

緊張が高まります。

「聞えますか〜?」

「えっすごい! 聞こえます!」

「聞えます聞えます」

よねってぃさんと私、あきにゃんさんの声が響き、

「俺も聞こえる」

はちさんの声もちゃんとクリアに聞こえてきました。

「凄い! ちゃんと四人で繋がりましたよ!!」

ちょっと感動して泣きそうになる私。

全員でバンザイをし、拍手まで沸き起こります。

まだツーリング開始前だというのに、既に感動のフィナーレを迎えたかのような盛り上がりように、全員で笑い出してしまいました。

 

 

「では、出発します」

前回同様、あきにゃんさんが先導をして下さいます。

あきにゃんさんの次がはちさん、そして私、一番後ろがよねってぃさんです。

「はーい」

私含む全員の声が上がります。

「うわっ、聞こえるわ。なんか気持ち悪っ」

はちさんが言ったので、笑ってしまいました。

おそらく、インカムを複数人で繋げるのはこれが初めてなのでしょう。何人もの声が同時に聞こえる感覚に不慣れなのかもしれません。

私も、四人以上で同時に繋がったのは初めてなのでワクワクします。

 

やがてゆっくりと走り出したあきにゃんさんに続き、3台のオフロードバイクも走り出しました。

 

 

実は、こうしてインカムを繋げられたことにより、この日何度も危険を回避出来ました。

それは予想もしなかった状況に見舞われたからなのですが、この時の私はただ、ツーリング開始による胸の高鳴りに身を任せ、アクセルを開くのみでした。

 

 

そして──。

この日ツーリングを終え帰宅した私は、いの一番にヨシさんへとメッセージを送ります。

 

『ツーリングより無事帰宅いたしました。ありがとうございました、ヨシさんのお陰で全員とインカムを繋げることが出来ました』

『お疲れ様です。ライダーとして、ライダーのお役に立てて嬉しいです』

 

実はこの時ヨシさんは、体調不良により歩行も困難な状況に陥っていたのです。

にも関わらず、インカムの繋げ方を親身にレクチャーして下さいました。

それは良かったと喜ぶヨシさんの存在が、本当に有難かったです。

 

 

たかがインカム。されどインカム。

一つの文明の利器であり、それがなくともツーリングは成立します。

ですがそれを繋げるために、色んな人達の助力や繋がりたいと願う人達の想いとがあるのです。

 

しっかりと無線の繋がった四人でのツーリングは、まだ始まったばかりです。