アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

微笑みのビーナス〜長野ソロ泊まりロンツー 完結編

翌日、早朝5時に起きて宿を後にします。

快晴でした。空気も爽やかです。

 

給油を済ませ、河沿いの小道を進みます。

昨日も通った道だというのに、あまりの美しさに歓声を上げました。

朝日が差し込み両脇で背の高い草が揺れています。

 

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国道152号線に入りました。

その辺りは『メルヘン街道』というらしいです。メルヘンな道かどうかはともかく、その気分を満喫します。

やがて県道191号線『湯みち街道』を進みます。

走る道走る道どれもが美しく、機会さえあればセローを停車して夢中で写真を撮りました。

 

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長野は美しい。

 

そう聞いてはいましたが、想像以上でした。

それとも、泊まりツーリングの翌朝だからでしょうか。以前も泊まりツーリングで、翌朝走った時に見た霞ヶ浦の絶景に感動したのを覚えています。

一晩眠って旅の疲れも癒え、朝日を浴びて見知らぬ土地を走れるから、なのかもしれません。

 

 

そうしてやって来た『御射鹿池』。

私はこの場所を、日本画東山魁夷の『緑響く』という作品で知りました。

美術館で一頭の白い馬と緑に囲われた池畔が描かれた絵画を前に、そこから動けなくなったものです。

それほどまでに魅了してきたその絵画の舞台です。是非とも見てみたいと思ったのです。

そしてその願望は、バイクに乗ることで果たせられました。

 

 

その感動は想像以上でした。

 

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澄んだ池の水と屹立する木々のコントラストとが美しく、息を潜めて見入ります。

 

 

次なる目的地は『白樺湖』です。

寒さのため身体が冷え始めました。

今日は気温が25度まで上がる予報でしたが、ここの気温を見るとわずか11度でした。

持ってきた長袖だけでは足りず、上下のレインコートまでをも重ね着します。

 

 

白樺湖も穏やかないい湖でした。

ヒルちゃんボートがありましたが、さすがにまだ朝早い時間帯のため誰も使用していません。

 

 

白樺湖を出て県道40号線に入るや、いよいよビーナスラインの始まりです。

 

憧れの道を走れる喜びを噛み締めます。

今朝、宿を出てからここまで、何度歓声をあげたか分かりません。それでもまだまだ上げ足りないとばかり、声が溢れ出てきます。

 

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走り始めてすぐに写真を撮ります。でもこれ以降は撮らないでおこうと決めていました。

ビーナスを走りながら何度も撮りたくなるだろうと思いましたが、そのために停車させることも、そこに気を取られて走りに集中出来なくなるだろうことも分かっていたからです。

 

せっかくだから全身でビーナスを味わいたい──。

その願望が、私をカメラではなく走りに集中させます。

 

景色は美しく、雪が完全に溶けた大地からは青葉が生い茂っていました。

数日前までは今日も雨予報だった筈。

でもそれは覆りました。

遥か遠くまで見渡せるクリアな視界と眩しいほどの青空が、奇跡とも言える景観を提供してくれました。

 

 

女神様、ありがとうございます。

 

 

思わず、感謝の念が沸き起こります。

 

私は幸運でした。

はるばる赴いても、その先で好天に恵まれるとは限らないのがツーリングです。

今日のこの天気、この日差しと自分自身のコンディションでここへ臨める喜びを改めて噛み締めます。

 

 

霧の駅を通過します。

沢山のバイクが停まっていました。それを脇目に運転を続けます。

 

 

「う〜ん…」

 

ここへ来て、私の心境に変化が起こり始めます。

 

この世に『感動疲れ』なる状態があるのならば、まさしくこれがそうなのでしょう。この長い道のりで感動し続けるのは、中々難しいのかもしれません。

 

 

でも、それだけではないような気がします。

 

まず、セローの特性。

私の愛車セローは、とても素直な愛すべきいいバイクではありますが、パワーやスピードの面ではどうしても劣ってしまいます。

長く続く登り坂に、バテてスピードダウンしていきました。

なるべく負担をかけたくないので、セローのペースに合わせて進みます。

後ろからバイクや車が来る度、ウィンカーを出して左端に寄り、抜いて貰いました。

追い抜くライダーさん達が、片手を上げて挨拶してくれます。

 

このワインディングを、あのスピードで颯爽と駆け抜けたらさぞ気持ち良いのだろうなぁと思いながら、のんびりと走り続けます。

 

 

そして、しみじみと思いました。

 

あぁ、私って運転下手だなぁ。

 

追い抜いていくバイクたちの運転を見ながら、改めて自分の運転技術の拙さを実感したのでした。

カーブを曲がる時にはこれでもかと言うほど減速をし、なのにライン取りもいま一つでバンクも上手く出来ません。

 

何故今この時、このタイミングでそれに気付けたのでしょうか。

もしかしたら、今までのような本格的な峠道では、そんな余裕はなかったからなのかもしれません。

ビーナスラインのカーブはそこまで急ではなく、見通しもそこまで悪くありません。

その為、少しだけ自省する余裕があったのでしょう。

尚且つ、他のライダーさん達の動きを観察する機会に恵まれました。

 

 

そのように。

ビーナスライン走り出しのテンションから明らかに下がってはしまいつつも、延々と走り進めて『美ケ原高原美術館』に到着します。

 

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標高2000mです。

 

ここでようやくの朝ご飯。

 

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『塩炙り豚まん』と『鹿肉のおやき』を食べ、ほっと一息つきます。

空腹だったので、あと10個は食べられそうでしたがよく味わってその2個にとどめておきました。

 

食べ終わると下界を眺めて景色を堪能し、静かにビーナスラインを後にします。

 

 

帰りは高速道路を使いました。

ついにETCの出番です。

ゲートをくぐる時、バーが上がらないのではないかと若干ビビりながら走行。

パッと目の前のバーが上がった時は、少しだけ感動し、そしてなにやら誇らしげな気持ちにもなりました。

 

往路は約6時間かけて来た道のりを、2時間ほどで帰ります。

 

 

 

二度目の泊まりロングツーリング。

見たいと思っていた景色を全て見、走りたいと思った道も走り、食べたいものも食べました。

気ままなソロのツーリングではありましたが、学びや感動の多いものとなりました。

 

 

微笑んでくれた長野のビーナスに、跪き心からの、感謝です。