アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

初めてのバイク〜実走編③〜

公道では、Sさんが先導してくれるとのことでした。

まず、車道に出なければいけません。

ですが海沿いのその道は交通量が多く、常に混雑しており中々車が途絶えません。

Sさん一人ならば、とっくに割って入ったのだと思いますが、後ろに初心者の私がいたので、完全に車が途絶える時が来るのを待ってくれました。

 

長らく待って、奇跡的にその時が来ました。

Sさんが出て行った車道に、私も続いて出て行きます。

初めての公道です。

Sさんが流れに乗って、スピードを上げます。私もそれに倣おうとアクセルを回します、が、スピードが出ません。そうか、ギアを上げなければスピードは出ないんだった、とすぐに気付き、ギアチェンジ。

更に加速させる為に、またギアを上げます。

カーブは緩やかだったので、苦もなく恐怖心もなくのびのび曲がれました。

でもしばらく進むと、左折するために停止します。落ちるスピードに、ギアを下げるタイミングが分からず手間取りながらも停止。あれ?ニュートラルに戻らない、と焦りながらなんとかニュートラルに戻し、再び発進。

初めての左折は、車体と車体の間をくぐり抜けましたが綺麗に曲がり、再びギアを上げます。

 

スピードが上がる、ギアも上げる、スピードが落ちる、またギアを落とす。停止でニュートラル。しばらくはその操作にいっぱいいっぱいでした。

 

ほどなくそれにも慣れてくると、エンジンの音でギアチェンジの正しいタイミングが分かるようになってきました。

そうなると俄然楽しくなってきます。

トップギアにした時のクロスカブの滑らかな走りと静かなエンジン音が心地よく、正しいギアに走らせることが出来ているのだという充実感から思わず笑みが零れます。

 

Sさんが一旦停止し、走れそうかどうか聞いてくれたので、これなら行けそうだと答えました。

それならばと、横須賀のとあるカフェを目指します。

道は、アップダウンのある広めの道路。ダウンはともかく、アップでは馬力が足りずアクセル全開でも前を走るSさんとの距離が離れるばかり。そういう時はギアを下げるように言われていたことを思い出し、ギアを下げて登ります。

その、ギアの扱いに慣れてきた頃、目的のカフェに着きました。

ここまでは、ほぼギアに捉われていました。

 

カフェで食事をし、再び出発。

ギアに慣れてくると、色々なものが見えて来ました。

まずは、景色です。

なるほど、タンデムとは全然違います。

当たり前ですが、後ろに乗っている時はライダーのヘルメットが目の前にあり、景色を見るには右側か左側のみしか見えません。

自分で運転すると、目の前の景色全てが見渡せるのだと、運転に集中しながら右側の丘と左側に広がる海を感じました。

路面も自分に向かって流れてきます。

風もそう。

タンデムではライダーが一身に受けていた風が、自分一人に吹いてきます。

その日は暑かったので、海から運ばれてくる風は心地よく顔や腕を撫でていくのを感じました。

周囲の車の流れに乗り、潮風と陽の光を感じながらクロスカブを進めます。

 

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そうやって走りながら、ようやく私は前方を走るSさんの凄さに気付いたのです。

時々左端に寄るよう私にジェスチャーし、先に行くよう誘導します。私の後続車を先に行かせているのです。先導して走りながら、私の後続を走る車にまで気を配っていました。

右左折で私がウィンカーに手間取らないよう、自身がウィンカーを出す前から手で知らせてくれます。

付いて行くのがやっとの時はスピードを落とし、適切な距離になるよう調節してくれました。

しかも、ナビも何も見ずに道を把握しているようでした。もし私一人だったら、まずギアチェンジでいっぱいいっぱいになり、今度は道を覚えて思い出しながら進むことでまた頭がいっぱいになったかもしれません。

前を走るSさんがスピードも道も全部調整してくれたから、安心して走ることが出来ていたのです。

 

ひとしきり走り、海沿いのカフェで休憩を取る事にしました。