アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

たい焼き頬張り、語り合う夢

さて、今や二輪免許もマイバイクも取得しバイクライフを満喫している私ですが、今回のお話は、その、ずっと前にまで遡ります。

 

実はこのツーリングレポートを書くにあたって、初期の頃は葛藤がありました。

それは友人Sさんのツーレポを読んでいたからかもしれません。

 

http://zekkei-tabirepo.hatenablog.com

 

私も彼の書き方を踏襲すべきなのか、はたまた全く違う切り口からいこうか、悩みました。

悩んだ末に、私は私独自の書き方でいくことにしたのです。

 

行ったお店の名前、そのメニューや店主の描写は、私にはおそらく上手く書けないと思います。その代わり、私自身と深い繋がりが出来た方、そして見た景色、感じたことありのままを私独自の目線で書いていこうと決めました。

 

なので、これから書く方々は深い繋がりが出来たと私が感じたお二人です。

 

 

時間は遡ります。

それはSさんから初めてタンデムツーリングに連れて行ってもらった時のこと。そう、このブログの『初めてのバイク〜タンデム編〜』でも書いた、あのタンデムツーリングでのことです。

 

 

https://qmomiji.hatenablog.com/entry/2019/10/02/121854

 

その日、酷い豪雨に見舞われながらも連れて行って貰った先こそ、山梨県道志村、道の駅どうしの斜め向かいに店を構える、『たい焼きロッキー』さんだったのです。

 

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Sさんのブログを読み、たい焼きの描写があまりにも美味しそうだったので食べに行きたくなり、連れて行って貰うことになりました。

その際、格闘技をやっていた私の為にSさんがとある計らいをしてくれたのです。

「そこ、店主が元プロボクサーですよ。ミットとグローブを持参して行ったら、ミット受けしてくれるかもしれません」

「えぇ〜? ホントに!?」

私は舞い上がりました。

 

ここで軽く格闘技の説明をします。

ミットを受ける側も、ただ構えて力で耐えていればいいというのではなく、テクニックを要するのです。コンビネーションの指示を出し、相手の拳を的確に把握して打ち返すくらいの勢いと瞬発力がないと成り立ちません。

当時、実践的なミット受けに飢えていた私は、Sさんのその提案に胸躍らせました。

なんせ元プロボクサーです。どんなふうにミットを受けてくれるのか、期待が高まります。

ですが、ここでちょっと疑問が。

「え、でも。営業時間中に?」

「そうですね。空いている時間帯を狙って、になりますが」

「それって…。営業妨害にならない?」

「事前に連絡しておきますけど、たぶん大丈夫だと思いますよ」

この時は、たい焼きロッキーというお店がどんなお店なのか、全く把握していなかった私。色々と気にかかりました。

 

そして当日。

先にも述べたように、ずぶ濡れになりながらも到着した、たい焼きロッキーさん。

想像していたような、大きな建物の中に、レジやテーブルや厨房があるような、そういう店舗ではありませんでした。

まず注文窓口のついた小屋があり、屋外の少し離れた所に屋根付きのテーブル席があります。こじんまりとはしていましたが、可愛らしい装丁と手作り感溢れる親しみ安さは、不思議な安らぎを与えてくれました。

バイクが到着する音が聞こえたのか、エプロン姿の女性が笑顔で出迎えに来てくれます。

「あら、いらっしゃい。雨の中大変だったでしょう」

Sさんが道中いかに大変だったかを語り始めます。その話に、「うん、うん。あらぁ、それは大変だったわねぇ…」と頷きながら相槌を打つ女性。

この女性が、たい焼きロッキーの女将さんでした。その立ち居振る舞いから、愛嬌と気遣いで日頃から全力でお客様をおもてなししている様子が目に浮かびます。

 

たい焼きとコーヒーを注文し着席しますが、ここで可愛らしいキャラクターが。

 

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なんと奥様手作りだという、だるまの置物が着席しております。だるまんと、わるまんというそうです。

 

やがて、先程の奥様が男性と並んでやって来て、注文したコーヒーとたい焼きを運んで来てくれます。

この男性こそ、たい焼きロッキーの店主、ことロッキーさんでした。

屈強な体つきと快活な話し方、豊富な人生経験により次々飛び出してくる話題はどれも面白く、驚きながらも興味深く聞き入ってしまいました。

この日は雨が降っていたので、お客様が他にあまりいらっしゃいませんでした。今思えば、それはとても幸運なことだったのでしょう。そのお陰でお二人とたくさんお話することが出来ました。

 

ひとしきり世間話をした後、さっそくミット受けをやってくださいます。

ロッキーさんがミットを構え、グローブを嵌めた私が指示通りに拳を繰り出します。

硬い。これ程までに強く的確に受けてもらえたのは初めてです。

私は血が滾るのを感じました。

次々繰り出す拳も、鮮やかに受けいってもらえます。

ロッキーさんのパンチも受けましたが、さすがでした。全力で打たれていたら、きっと肩が外れてしまっていたことでしょう。

 

その後は腕相撲もしましたが、両手でやってもビクともしなかったです。

 

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ロッキーさんは様々な経歴をお持ちですが、本職は焼き絵職人さんです。

焼き絵とは、木材などの表面に熱した鏝などの道具で焼き跡をつけ、それによって絵や文様を描く技法のことで、非常に緻密で繊細な技術を要する手法なのだそうです。

店内にはロッキーさん作品のポストカードが販売されていましたが、目にした時、その緻密さと完成度の高さに驚愕したものです。

あの繊細な作品を生み出すその手で、あのようなダイナミックなパンチを繰り出すとは。

奥様自作の、だるまんのキャラクターグッズも可愛らしく、この日色々なグッズを買い込みました。

 

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お二人の夢は、ミュージアムを持つことだそう。

芸術家としてのお二人も今後是非とも応援していきたいと、この日、絶品のたい焼きを頬張りながらそう思ったのでした。

 

お二人とTwitterのアカウントをフォローし合い、その後もやり取りが続いたわけですが、私が事情により格闘技が出来なくなった時も、二輪免許の教習に通い始めた時も、変わらず繋がりを持って下さり、時に励まし時に共に喜んで下さいました。

 

バイクアカウントを作ってから、真っ先にフォローしに行ったのも、実はSさんではなくロッキーさんでした。ロッキーさんもバイク乗りだからというのもありますが、繋がりを持ちたい方として一番に思い付いた方だったからです。

 

私のポリシーで、『自らの運転で行ったツーリングしかツーリングと認めないし、書かない』と決めていましたが、今後も関わるであろう『たい焼きロッキー』さんのことは、出逢いからここへ記さなければと思い、綴ることにしたのです。

 

 

 

そうして3ヶ月後、無事二輪免許を取得しセローという相棒も得た私は、喜び勇んで向かう訳ですが、一度目はロッキーさんの体調不良により、二度目は積雪により臨時休業となり流れてしまいました。

 

これはもはや、春になるまで無理なのかと諦めかけていたのですが、2019年最後となる31日、ついに実現を果たしたのです。

 

それは思いがけない出逢いと、予想だにしなかった初体験を得ることになったのでした──。