アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

二輪教習の受講記録 その⑩

さて、前回の挫折を味わってから一週間。

その間、シュミレーション2時間と学科1時間を経て、いよいよ実車です。そして二輪教習も残すところあと2時間となったこの日、2時間分の予約を取っておりました。

つまり、全ての課題がクリア出来れば今日で終了、出来なければ補習ということになります。

 

緊張してしまいがちですが、懸命に深呼吸して気持ちを落ち着かせます。

ここへは、バイクの乗り方を学びに来ているのであって、成績を競うためでもテストで一発合格するためでもありません。バイクに乗るための基礎がなっていないのなら、学び続ければいいのですし、そのために教習所があるのですから。

 

自分に言い聞かせ、教習にのぞみます。

 

教習が始まると、すぐに前回持ち越しとなった急制動の練習です。まずは大きく周回し、直線になったらスピードを上げていきます。この際、もちろん40kmまで上げるように言われました。

「ちゃんと40km出てますね」

と教官。

そう。止まらず走るのでしたら、40kmまで加速することが出来たのです。

ですが急制動では、完全に停止してから発進して加速、そして停止しなければいけません。その短い距離での加速を間に合わせなければいけません。

 

周回してみて、スピードが出ていることが分かると、ついに急制動をやってみます。

所定の位置まで移動し、教官の合図で発進。

アクセルを思い切り回し、自分の体感ではかなりスピードを出していました。

ですが、

「うーん、まだちょっと足りないですねぇ」

と教官から言われます。

一体何がいけないのか、混乱しかけます。

「試しに、次はエンスト前提でクラッチから手を離してやってみようか」

教官は3速に入れた後、クラッチを触らず停止するよう言ったのです。そこになんの意味があるのか、よく分からないまま再び発車位置まで移動します。

教官の合図により発進。

指示通り、3速に入れた後はクラッチには指をかけず、ブレーキだけで停止します。エンストはしましたが、綺麗に止まれました。

「いい、いい。今のは出来てましたよ!」

「え? 本当ですか?」

「はい。原因が分かりましたよ。癖なのか、クラッチを思い切り握りこんでしまっていたんです。それではアクセルをいくら回しても加速しません」

そんな細かな事だったのかと驚きます。

「それと、2速から3速に入れるタイミングが早すぎるんじゃないかなぁ? 2速でスピードが出てからシフトアップしないと、パワー不足で加速しませんよ」

 

もう一度、教官が言ったことを踏まえてやってみます。

発進。

2速に入れたらいつもより気持ち長めに加速、3速に入れてスピードを維持。ブレーキをかけ始めてから、クラッチです。バイクは停止線で停止します。

──出来た。

自分の体感でそう思えました。

「うん、出来ましたね」

教官からも認められ、急制動項目がクリアとなりました。

 

次の時間はいよいよ最終教習時間です。

と、教習が開始されると、先程までとは別のバイクがあてがわれました。

今まで二時間立て続けに受講する場合、同じバイクを使っていたのでその采配に首を傾げましたが、教官から説明があります。

実はそのバイク、検定の時に使うものなのだそうです。形は同じでも、教習中に使っているものとだいぶ違うのだと言います。

「他のものはアクセルを回せばエンジンがふかされて加速します。でもこれはコンピュータで制御されているので、軽く回すだけでも急加速するかもしれません。クラッチも、遊びがほとんどないので半クラッチの場所がいつもと違うと思います」

 

何故──。

何故、普段からそちらを使わせてくれなかったんですか、教官?

と詰ってみせても仕方がないので、最後の一時間で、必死にこのバイクの特性を覚え込もうと決意します。

 

とりあえず、ウォームアップでいつものように周回します。すると、

「!?」

確かに、全然感覚が違いました。大きく回っているのに、カーブで減速するのが困難に感じたほどです。これは初めてのことです。おそらく、半クラッチで進めていなかったのでしょう。

と、いうことは。

半クラッチで進んでいる、クランクと一本橋への不安感が沸き起こります。

 

ウォームアップが終わると、指示のあったコースを周回していきます。

最初の徐行急カーブで、半クラッチがきかず、うまく徐行出来なくて大きめに膨らんでしまいます。これも初めてのことです。

半クラッチの感覚が掴めない。

それがこんなに不安なことだとは思いませんでした。

 

そして、クランクです。

初めてのオートマの時はボロボロでしたが、CBになってからはクランクでは一度も失敗していません。

なのに今回は、コースに入ると驚くほどスピードが出てしまいました。いつもの半クラッチの位置ではクラッチがきいていないのです。アクセルがもろにかかってしまいました。

すかさずアクセルを緩め、不安定ながらもなんとか通り抜けました。

 

クラッチの感覚が掴めない弊害はまだ続きます。

 

一度も苦戦したことのない、坂道発進です。

停止し、フットブレーキを踏み込み発進。

その際、アクセルをいつもより多めに回してクラッチを開いていくのですが…。

エンストです。

再びエンジンをかけ、挑戦しますが、次もエンストしてしまいました。

卒検では、エンスト一回につき5点の減点となります。つまり、これが検定中でしたら、マイナス10点になってしまっていたのです。

なんとかクラッチの感覚を掴まなければと焦れば焦るほど、ミスが増えます。

 

最後は一本橋です。

これは問題なく走行出来ましたが、いつもよりスピードが出ていました。一本橋でスピードが出すぎたら、フットブレーキを使って調整するように言われていましたが、今まで一度も使ったことはなかったのに、今日初めて橋の上でブレーキをかけたのです。おそらくこれも、半クラッチが出来ていなかったためでしょう。

 

半クラッチ

基礎の基礎でやる筈の、この感覚を掴めないまま教習時間は終了し、みきわめの判も頂いたので、次回は卒検ということになってしまいました。

 

不安は残りますが、無事課題がクリア出来たと認められたことは素直に喜ぶことにします。長いようで短かった17時間、一ヶ月の教習生活が終了します。

 

当日までにイメージトレーニングをして、なんとかベストな状態で挑みたいと思います。