アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

二輪教習の受講記録その⑥

さて、教習7回目、この日はオートマ教習の日でした。

クラッチもギアもないのは楽なのか、はたまた逆に凄く難しいのか、何の知識もないままドキドキしながら臨みます。

 

と、その前に大きな出来事が。

土曜日の教習となったこの日、仕事が休みだった伝道師Sさんから連絡が来ました。

「教習を見学に行ってもいいですか?」

と。

最初私は冗談なのかと思い、受け流してしまったくらいです。以前にも書きましたが、Sさんの住まいは私の住まいから一時間は離れているのですから。でも、どうやら本気らしいと察した私は、教習開始時間と教習所の詳しい場所を知らせます。

 

教習所に着くと、既に到着していたSさん。若干興奮気味に教習所内のコースを眺めていました。しきりに、「いいなぁ、俺も教習受けたいなぁ」とこぼしています。

現在習っていることを習得するのにいっぱいいっぱいの私は、そこまで楽しめるSさんの余裕と運転技術が単純に羨ましかったです。そして、私は卒業した後も、教習所に来てコースを眺めて楽しめるのかどうか、思いを馳せました。全く想像がつきませんでした。

時間になったのでSさんと暫しお別れし、コースに向かいます。

 

一緒に受講したのは、既に中型二輪免許をお持ちの若い男性。普段から中型二輪を乗りこなすという彼は、幾分余裕そうでした。

この日はオートマのため、CBより重量があります。そのため、いつものサポーターより、厳重なものを装備させられました。緊張が走ります。

教官によるオートマ車のレクチャーの後、実際に跨りエンジンをかけます。そして発車したのですが…。

怖い。

バランスを崩しかけます。

まず、脚の置き場が違うので両足でシートを挟み込めません。その為、股関節で踏ん張りバランスを取ることが出来ないのです。

そして、やはりクラッチです。

半クラッチは、微妙なスピードを出すのにも、アクセルの強さを調整するのにも便利でした。ギアチェンジは面倒でも、今までクラッチの存在に助けられていたことに気付きます。

前方の教官が振り返り、もっとアクセルを回さないと! スピードを出さないと安定しないよ、と声をかけます。

怖くとも、やらなければいけません。私はアクセルを回し、発車させます。走り出したら、地面の左足を車体に乗せます。

ようやく発車です。

 

ふと、教習校舎のロビーの窓から、身を乗り出している人影が見えました。Sさんです。しかも、明らかこちらにカメラを構えていました。その姿はまるで、子供の運動会を撮影する保護者のそれです。

有難いけれど、これはもしや、大きな失敗をしたら全て記録されてしまうのでは…?

気にはなりましたが、とりあえず教習に集中します。

 

まずはウォーミングアップで、周回します。大きく回るのは簡単でした。一旦止まり、また発車、というのを繰り返します。停止は楽でした。両手のブレーキをかけるだけで停止します。ですが発車は、やはりアクセルのみで動かすことに抵抗がありました。ですがそれも、数回繰り返したらだいぶコツが掴めて来ました。

 

慣れてくると、一本橋を渡ってみようと言われました。

オートマでの一本橋。CBでですら習得していないというのに、慣れていない車体での走行はとても不安です。

教官はそんな私の不安をよそに、一人でさっさと渡ってしまいます。

私も恐る恐る後に続きます。

ですが、すぐに戸惑うことに。オートマの場合、前輪が見えないのです。慣れてきたら大体の感覚で乗れるのでしょうけれど、私の場合、前輪がちゃんと橋に乗ったか確認出来ないままだとまだ不安です。結局、怖くなりすぐに自分から下に降りてしまいました。

「じゃあ、もう一回」

無情にも教官が再び一本橋を渡ります。私は緊張しつつも一呼吸おき、大丈夫、私なら出来る。と自分に暗示をかけます。根拠はありません。でも、そう言葉にするだけで少しだけ落ち着くのです。

「大丈夫。私なら、出来る」

もう一度今度は小さく声に出し、再び挑戦です。

車体が、橋に乗ったのが分かりました。

そこで気付いたことが。オートマは重心が下にある為、すごく安定しています。走り始めこそアクセルのみの調整で不安定に感じていましたが、一旦安定した走りになれば、後は、真っ直ぐ進むだけです。

見事、一本橋を渡りきった私は、ほっと胸を撫で下ろしました。

 

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それも束の間、この日の教習はまだまだ続きます。

なんと、この慣れない車体で全てのコースに行くそうです。まだやったことのないコースも沢山あるというのに、です。

 

まず、発着地点へ。後方確認をして、出発。教官が、ここで後方確認をして右端に寄る、ウィンカーを出す、などの注意事項を説明しながら右左折を繰り返し、まず、初めての坂道へ。

登り坂の途中で停止し、発車。いわゆる坂道発進です。いつもよりアクセルを強めにかけなければいけませんでしたが、オートマなので難なく出来ました。

それが終わると踏切へ。しっかりと停止し、左右を確認して渡ります。

その次が先程やった一本橋です。今度はやはり落ちてしまいました。教官は気にせず先に進んで行きます。

そして、次も初めてのS字カーブです。これは危なげなく通り抜けられました。

障害物を追い越し、最後はクランクです。狭い道を、直角に二回曲がります。

いざやると、思うように上手く曲がれません。最初の右折で曲がり切れず、車体が大幅に右側に傾きます。

危ない!

転倒しそうになります。が、右足を地面につき、踏ん張ることで何とか免れました。レッグプレスとアンイーブンスクワット(片脚スクワット)で下半身を鍛えていて良かった。と、場違いにそんなことを考えながら、体勢を整え再出発。

思うに、今まで小さく曲がる時は、半クラッチフットブレーキをかけながらアクセルを開いて進み、バンク(体重移動)していました。それが、オートマの場合はアクセルのみなので、小さく曲がる術が分からなかったのです。車体も、重心が下で安定しているので、このような狭い直角の道では逆に小さく曲がりにくく、不利に感じられます。

最終的に、転倒はしないものの、三角コーンをなぎ倒しながら進んでクランクコースを抜けました。

スピードを上げ、ブレーキをかけ止まるコースを走り、最後はスラロームです。

スラロームは、バイクの練習といえば真っ先にイメージする、パイロンを避けて右へ左へと走行するあの動きのことです。

これも、やるのはこの日が初めてでした。

つい、目先のパイロンにばかり目が行きがちでしたが、先の先を見るように、と教官から言われ、そのように実行すると上手く走行出来ました。

 

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コースはこれで以上です。

 

とりあえず、この日の項目である、オートマに慣れることとコースを走ってみること、はクリア出来たようです。

 

教習が終わり、Sさんの所に戻ると、「いい動画が撮れましたよ」と見せてくれようとします。

「いやーやめてー! 見たくないわ、だって絶対ボロボロだったもん」

顔を覆って拒否してしまいました。

そう、今回は3回中2回も一本橋から落ちましたし、転倒もしかけ、三角コーンもなぎ倒しました。第一、最初の辺りでは発車に手間取ったりと散々でした。

「もっと上達してから来てくれたら良かったのに。せめて、オートマじゃなく、CBの日とか」

「ほう、CBなら自在に操れると?」

「……」

そう、別にCBも自在というわけではありません。全体的に、まだまだなのです。コースだって習い立てですし、課題は山積みです。

と、Sさんが無言で携帯電話を差し出しました。画面には動画が再生されています。そこに写っていたのは、一本橋を渡り切っている私の姿でした。

もう一つの動画は、スラロームをきちんとやり遂げていた私の姿。

「ちゃんと出来てるじゃないですか」

ずっとカメラを構えていたSさんが、3本中2本も失敗した一本橋の動画を撮っていなかった筈はありません。でも、私に見せてくれたのは、成功した唯一のそれだけでした。

そういえばSさんからは、SNSなどでバイクの転倒や事故シーンの動画は見ないようにと言われていました。そういうのを見てしまうと、そのイメージが定着してしまうからだそうです。今回あえて失敗動画を見せなかったのも、おそらくそういう意図があったのだろうと思います。

何よりも。

──ちゃんと出来ている。ちゃんと出来ていた。

その事実が、今後自分の強みになるような気がしました。

「それより、教習段階からの画像がある人って希少だと思いますよ」

ハッとしました。確かにそうです。自分では撮れませんし、家族や友達だって、わざわざ見に来てまで撮ってはくれません。私は素直にお礼を言いました。

「別に。今日暇だったので」

相変わらず、善意を素直に認めたがらない人です。

ともあれ、Sさんのお陰で今回のブログにこうして画像を載せることが出来ました。

 

確かに課題点は沢山あります。ですが、まだまだ、もっと成長しなければと、常に高みを目指し懸命になるのは私の長所でもありますが、短所でもあります。

ちゃんと出来た自分も褒め、そこを伸ばしていくことも大事なのではないかと気付けた、教習第一段階、オートマ教習の日となりました。