教習5回目、続きです。
繰り返しますが、雨の中での教習となったこの日。
スピードを出しては停止する項目を復習すると、今度は8の字コースに連れて行かれました。
教官がお手本で走って見せてくれます。そしてコツを何点か教えてくれました。
まず、視線は目前ではなく先へ。進行方向を見ていないと、進めないそうです。左回りの時には、左の肩越しで先を見るくらいの感覚でちょうどいいのだとか。
次に、円を描いている時は、必ずアクセルも回し続けること。そうしないと転倒してしまうからだそう。
そして、ギアは2速、半クラッチで進むようにと。
一通りレクチャーが終わると、ついに実践です。
8の字の交差部分まで緩やかにカーブし、最初の周回に差し掛かります。が、円が思ったよりも小さい。ハンドル操作のみでのカーブでは曲がりきれません。
ここで初めて、体重移動を使ってのカーブ(バンク)に挑戦してみます。左回り、恐る恐る体重を左に乗せます。車体がそちら側に傾き、小さな円を描いてカーブ出来ました。そして、また交差に戻ります。車体を真っ直ぐに直し、次は右回りです。今度は右側に車体が傾きカーブします。
あとは、グルグルと8の字走行です。途中からはバンクがスムーズに出来るようになり、楽しく周回しました。
次に、小旋回です。
ほんの小さな円を描いて走行します。
まずローギアにし、フットブレーキを軽く踏みながらアクセルを僅かに回し、小さく小さく旋回します。車体が完全に止まってしまうと転倒するので、止まらないギリギリの速度を保ち、ゆっくり走ります。
次に連れていかれた先は、一本橋です。
噂はSさんから聞いていました。長さ15メートル、幅30センチの台を、二輪車で走行します。最終的には、手前で一時停止して7秒以上かけゆっくり渡らなければいけないそうですが、まずは渡り切る練習でした。
バイクのタイヤ幅を考えるとすごく狭く感じられます。ですが、走行した勢いで乗れば真っ直ぐ渡り切ることが出来ました。
慣れてきたら、今度は橋の手前で一時停止してからの走行です。
何故か急に出来なくなりました。
上手くバランスが取れず、落ちて転倒しまう恐怖が湧き出て、自分から橋を降りてしまいます。やってもやっても中々上手くいきません。
教官からのアドバイスで、走り始め、車体が安定するまではある程度のスピードが必要と言われました。スピードを出さず、不安定な状態のまま橋に乗るからなのだと。
そのアドバイス通りに渡ったら成功はしましたが、もう何回か練習をしようとしたら、この日の教習時間が終了となりました。まだ掴みきってなかったのでちょっと悔しかったです。
──教習6回目。シュミレーションです。
シュミレーションルームに、私の他には、若い男性二人が集ってました。教習開始時間までこの二人の男性に話し掛けますが、幾分距離を取った受け応えをされてしまいました。まぁ、色んな人がいると気にせず教習に備えます。
教習開始です。
教官が入室し、まずはテキストを開いて二輪車の特性を座学で説明。次にシュミレーション装置の説明です。
それが終わると、一人ずつ跨って操縦していきます。
田んぼの『田』の字の形の道路を、好きなように走らせます。まずは右隣の男性から。キーを回し、クラッチを握りこんでエンジンを始動させるという流れが、完全に本物と一緒なようでした。
次に、私の番です。
私はいつもの通りに、後方確認をして右足を下ろし、ギアをローにしてエンジンを始動させます。
あれ?
と感じました。
教官が、感覚は本物とほぼ同じと言っていましたが、私の体感では全然違ったからです。
半クラッチにしてアクセルをほんの少しだけ回しても、それだけでは進みません。これでは急発進してしまい危ないのでは? というくらいアクセルを回します。そして、クラッチを半分しか開いていない筈なのに、エンストしてしまいました。
気を取り直し、再度発車して走らせ、私は右折をしようと思いました。ウィンカーの仕様は一緒です。車体を右側に寄せる際、つい癖で後方確認をしてしまいます。見えたのは当然、シュミレーションルームの風景のみです。
「あっ」
自分のミスに気付き思わず声が漏れます。教官は、「いえ、大丈夫ですよ。その習慣付けは素晴らしいです」と褒めてはくれましたが、声を出して笑っています。
横目で見やると、他の受講生達も、一人は顔を伏せて肩を震わせており、もう一人は不自然に咳き込んでから口を抑えています。笑いをこらえているのは一目瞭然でした。
ともあれ、最初のシュミレーションはこれで終わりです。
次に、ブレーキ操作のシュミレーション。
ブレーキの割合は前輪7割後輪3割。つまり、ハンドブレーキを強めに、フットブレーキは弱めにかけます。その、強さの割合をシュミレーションで実測するのです。
他の二人は、どうしても脚に力を込めてしまうのか何度やっても足のみ100%と出ていました。
私の番です。
まず、40㌔のスピードを出し、パイロンに差し掛かったらアクセルを緩めてブレーキ開始。綺麗に指定の位置で止まれました。
判定は──。ちゃんとした7:3でした。
正しくブレーキが使えていると褒められましたが、本体と感覚がだいぶ違うので、リアルでもそれができているのか自信は持てませんでした。
最後のシュミレーションは、危険道路の走行です。私の場合、舗装されていない道路や、急カーブやアップダウンのある道でした。シュミレーションなこともあり、落ち着いて操作できました。他の受講生は、雨に濡れたマンホールや突風が吹いて来たりなどで転倒させられていました。
バイクは天候の影響を受けやすいです。
色々なパターンを想定しなければいけませんが、教習所のコースで体験出来ることには限りがあります。だからシュミレーションという形を取って、疑似体験させるのだろうと思います。
教習終了後、他のお二人とも難しかったねと笑い合い解散となりました。最後に少しだけ打ち解けられた、充実の時間となりました。