アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

睡魔の反省会〜秩父ソロツー完結

帰りは、道を覚えていたのと、渋滞に巻き込まれなかったのとでスムーズに走行出来ました。それでも想像以上に時間が掛かります。

やはり、距離に対しての時間計算が甘かったようです。

 

途中、3回ほど立ちゴケしそうになりました。

赤信号で停止しただけなのに、コケる寸前の浮遊感が襲ってきて、慌てて脚で踏ん張ったのです。

さすがに3回目にそれがあった後、不審に思います。風が強いわけでも、道路状態が悪いわけでもありませんでした。

これはもしや、自分が自覚している以上に疲弊している──?

そういえば、少しふらふらとした感覚があります。

どうしよう、休憩しようか?

少し迷いましたが、結局やめにしました。

この時の判断が適切なものだったのかどうか、実のところ今でも分かりません。でもこの疲労状態で日没後に運転するリスクと、天秤にかけました。

時刻は15時半。あと一時間程で日没です。すぐには暗くならないのだとしても、17時を過ぎれば確実に暗くなってしまいます。

休憩で、何時間かの仮眠が取れるのならば話は別です。ですが、せいぜい20分から30分程度の休憩となるのでしょう。それならば、少しでも早く帰った方がいいと判断しました。

夜の走行は何度かやりましたが、まず交差点の名前が見えません。目印も見えません。複数車線でその状態になると、進行方向の車線に入れず行きたい方向に進めなくなるかもしれません。

今の疲労状態で、更に『夜間の運転』という要素が加わってしまったら…。本当に事故を起こしかねないと思いました。

それに、何よりもとにかく早く帰りたかったのです。

 

神奈川県内に入ります。往路で迷った、129号線をきちんと右折しました。

やがて走り進め、安堵のあまり泣きそうになりました。

やっと、見覚えのある所へ来ました。そこは、前回の富士麓ツーリングでSさんと『反省会』をした場所だったのです。

家に帰り着いたわけでもないのに、何故だか妙にホッとしました。そして同時に、私はずっと不安だったのだと気付かされたのです。

思えば、今回のツーリングの約3分の2は129号線と16号線の複数車線でした。

繰り返される車線変更、後ろと横を走る車のプレッシャー、見逃せない目印や案内標識。通り過ぎたらUターンの中々出来ない道。地図を確認するのも一苦労でした。

怖かった。ずっと不安だったのです。

ですが、まだ家まで一時間ほどあります。緩みかけていた気持ちを引き締め直しました。

──帰りたい。とにかく、無事に帰りたい。ちゃんと帰るんだ。

帰路では、ずっとその言葉をただひたすら呪文のように繰り返していました。

 

 

家に帰り着いたのは17時前でした。暗くなる前に帰ることが出来ましたが、帰りも4時間近くかかってしまったのでした。

熱いお風呂に浸かると、どっと疲れが出てきます。やはり、相当疲れていたようです。

そして、今日のツーリングを振り返ります。

何も出来なかった。何一つ達成出来なかったし、楽しんでも来れなかった。思えば、ツーリングに行ったのにセローの写真も風景の写真すらも撮って来ていません。

一体何をしに行ったんだろう…?

考え、落ち込んでしまいます。

 

お風呂から出ると、SさんにLINEを送ります。

秩父ツーリングからただいま戻りました。なんか、今回は全然ダメだったわ…』

すぐに返事が来ました。

『お疲れ様でした。ダメだったとは?』

そこで私は今日の出来事をざっと説明し、その上で、昨晩就寝が遅かったこととその理由まで話したのです。就寝が遅くなったのは、実は愉快な理由からではありませんでした。

『ああ、なるほど。箸を忘れたと言っていたので珍しいなと思ったんです』

言われて初めて気付きました。

確かにそうです。私は平日毎日お弁当を持って行っています。でも箸を忘れたことなんて一度もありませんでした。毎日習慣のように準備し、包んで持って行っているのです。

それを、今日に限って何故忘れたのでしょうか?

仕事用の持ち物と、ツーリングのそれとは異なるとはいえ、お弁当とセットで必ず持って行っている箸です。入れ忘れたのには原因があったのかもしれないと思いました。

『もしかして私、朝の準備段階から調子悪かったのかな?』

『そうだったんじゃないかと思います』

この時、まだ夕飯前の時刻だというのに猛烈な睡魔に襲われていました。それでも、今日のツーリングのことは今日中に振り返りたく、気を振り絞って思考を巡らせます。

私にとって、これは欠かせない『反省会』でした。

そして今日一日を振り返り、思い当たる節が多かったのです。道を間違える、釣り銭金を貰い損ねる、お箸を忘れて外食になる、目的地にたどり着けない、どれも笑える失敗といえばそうです。それが一々心にグサリと来ていました。

つまり今日という日を楽しめなかったのは、道のせいでもトラブルのせいでもなく、私自身の体調とメンタルがガタガタだったからでした。ツーリングを楽しむ下地が出来ていなかったのです。

『でも、朝起きた時には平気そうだと思ったのに』

『それでも、万全じゃなかったんだと思います。睡眠不足とメンタルが弱っている状態で乗り切れるほど、ツーリングは甘くありませんよ』

少しでも不安があったのなら辞めておくべきだった、と言われます。

『走り続けるほどに疲労は蓄積していきます。ツーリングは、万全な状態だとしても難しいんですよ』

『そっか。もうそこの判断からして今日はダメだったんだね』

瞼が重くなってきました。家族分の夕飯は用意してあります。私は持ち帰ったお弁当を平らげ、歯を磨くとベッドに潜り込みました。Sさんから返事が来ています。

『一度も走ったことのない道を、自力で調べて走って来たんです。そこは、誇りに思っていい』

素直に、嬉しかったです。今日の自分に褒めポイントがあったというだけで救われます。

『私、今日のツーリング、ブログには書けないかも』

『それは自由ですが』

Sさんは続けます。

『でも、上手くいかなかったツーリングほど、学ぶべきことは多いと思いますよ。それを文字にすることで振り返ることが出来ます』

書きたくないと感じつつ、それでも書くのだろうなと予感がありました。次に活かすにはどうしたらいいのか、よく考えるべきだとも思いました。

『とにかく』

Sさんの送ってくれた文字を目で追います。もはや、目を開いて画面を見るのがやっとでした。

『そんな状態で走りに行って、よく無事に帰って来ました』

幼稚園児ですらまだ起きているであろう時間帯に私は寝落ちし、翌朝までコンコンと眠り続けたのでした。

 

 

今回の秩父ツーリング、結局こうして記事にしましたが、書くことはやはり直前まで迷っていました。

一文字一文字、書くことが本当に辛かったです。

それは起きた出来事を振り返るのが切なかったのもありますが、何より今回のツーリングで『見たくない私自身の欠点』が明るみに出るからです。

詰めの甘い下調べ、融通の利かない計画性、気持ちを切り替えられない弱いメンタル。そして、圧倒的に足りていないバイク乗りの経験値。

その、全てを晒すことになります。

ですが、そこに向き合わないと変わることが出来ないのも分かっていました。

次に活かすには、今回のツーリングを省みて改善していかなければいけないのでしょう。

 

 

景色も綺麗で、美味しく楽しくワクワクする。

勿論、そんなツーリングは素敵です。でもそればかりではないのでしょう。様々なツーリングがあり、そこから何を学ぶか、何を感じ取れるかが重要となって来るのでしょう。

 

ひとたび走りに出たのなら、自力で切り抜け自力で帰るしかないのがソロツーリング。ゆえに、怖さと不安感が常に付き纏います。

それでも私は走り続けたいと思いました。

その為にも、沸き起こった出来事全てを糧とし、成長していこうと決意したのです。