アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

雨の中街の中

日曜日は午後から雨の予報だったので、あえて走りに行こうと決めていました。雨走行の練習です。

最初から遠出は難しいと思ったので、まずは市内を好きなように走行することにします。

 

雨の中で走ってみた一番の弊害は、ヘルメットシールド部分の曇りでした。あまりに曇るため、シールドを全開にして走ります。市内をちょこまか走っているだけなので平気でしたが、この状態ではスピードを出した時、雨粒が顔面に叩きつけられ痛いのではないかと思いました。

後日このことをネットで呟くと、色々な方からアドバイスをいただきました。曇り止め加工が必要なようでした。

 

ブレーキの利きも、いつもと違いました。ブレーキをかけ始めてから利き始めるまで、少し距離が伸びてしまいます。

色んな方から聞かされていた、マンホールやグレーチング(側溝の蓋)が滑るという情報も肝に銘じながら走ります。実際に滑ったことはないのですが、まさか滑ってみるわけにもいかないので避けて通ります。

街中なので、カーブや勾配はそれほどのものは経験出来ませんでした。

これが、もっとスピードを出して走る道だったら、峠だったら、歩行者の多い道だったら、と、色んな事態を想定しながら走りました。

 

ウエアとヘルメットのお陰で身体が濡れることはなかったのですが、目的地に着いて降りる際、どうしても濡れた諸々の物も持ち込まなければいけません。

この日私は図書館に行くつもりで、返却する本も積んでいました。ドラムバックにカバーを被せていましたが、荷物を出す際どうしても中の物が濡れてしまいます。また、私自身もウエアごと濡れているので、建物の中に入る際、タオルでよく拭かないといけませんでした。

 

そして、最大のネックとなるのは、ツーリングの際いつもスクリーンに貼っている、ルートを書いた手書きの紙です。当たり前ですが雨の日は貼ることが出来ません。

知らない道を雨の日に走る場合、頑張って暗記するか闇雲に走るかしかないようでした。

 

雨の日のツーリングは、色んな危険性だけでなく煩雑な要素も含まれているのだということを学習した、貴重な一日でした。

 

 

翌日──。

月曜日で平日でしたが、仕事は有給休暇を取っていました。

先日のリベンジをはかり、Sさんと一緒に道志に行く予定だったからです。ですが、なんとこの日も臨時休業でした。

ではどこへ行こうかとなり、横浜市内を走ってみることにしたのです。

 

苦手な街中走行を、お手本を見ながら走れることになったのは私にとって幸運でした。

 

走り抜け、横浜ベイブリッジを遠目に眺めます。

 

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バイク用品店とバイク屋を見てまわり、軽く休憩を取ると赤レンガ倉庫を目指します。

Sさんはナビを使用しているのですが、それでも分かりにくい三叉四つ叉の交差点がありました。そういう時にパニックにならず勘で進み、違ったらUターンしたり別ルートを取っています。私はその姿勢をよく観察しました。

 

やがて赤レンガ倉庫に到着です。

横浜市内のメッカとも言える場所なので、さぞや駐輪代も高いのだろうと思っていましたが、回り込んだ先に無料の駐輪場がありました。まさか無料で停められるとはと驚きます。週末はいっぱいで停められない時もあるそうですが、その日は平日だったので空きがありました。

赤レンガ倉庫はXmas前ということもあり、賑わっていました。

 

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ひとしきり散策し、出発です。

 

横浜中華街や山下公園など、誰もが知っている横浜の観光名所の前を通ります。

ですが、私にとってそこは意外なくらいに普通の『道』でした。

何故だか私は入り組んでいて複雑で、走行が困難な道路を想像し、勝手に恐れていたのです。でも実際に走ってみるとそこは人が人のために作った、ちゃんとした道路だったのです。そんな当たり前のことを思い知りました。

都心を走ることへの恐れが、少しだけ軽減されました。

 

横浜市内を走ってみると、案外道路脇で駐停車している車が多いことに気付きました。それらを見ながら、「これなら、万が一道が分からなくなっても、端に止まって地図が見られそう」と思ったのです。

これは129号線や16号線を走っていた時にはあまり見られない光景でした。

そして車はそれらを抜く時、一々車線変更をしていましたが、バイクはその横を通っても車線を超えません。

ああ、バイクって身軽なんだ。

改めて、そこに気付かされたのです。

 

横浜市内を走り、湘南方面へ向かいます。

国道1号線は色々な車両が走行していました。大型のトラックも多かったです。

私はSさんの走りに注目しました。

先程気付いた、バイクの身軽さ。そこを活かしていました。

例えば大型トラックの後ろについてしまうと、車体差があるため前方が見えません。私はそういう場合、充分な車間距離をとって走行するのですが、Sさんは早々に見切りをつけ、車線を変更していました。

バスの後ろについてしまった時もそうです。バス停の度に停車するので、やはりすぐに車線を変えていました。

Sさんは、片側2車線の道を軽快にスイスイと走行していきます。その縫うような走りは、小回りの利くバイクの特性を最大限に活かしていたのです。

 

横浜は、丘陵地の上に立ち並ぶ街です。そのため、普通の住宅街を走っているのに峠道のようなアップダウンやカーブがありました。

楽しい。

付いて走りながら、私はしみじみとそう感じました。

バイクは、楽しい。

その基本を思い出したのです。たとえ走るのが峠だろうと、街中だろうと。

 

それにしても。

私は疑問に思います。

彼の後ろを走ると、何故いつもこんなにワクワクするのだろう、と。

 

「うわぁ〜、めっちゃ楽しい! これは初かも」

赤信号で停止したので、隣のSさんにやや興奮気味で話し掛けます。

「ん? 大丈夫ですか?」

私が怖がって、喚いているように聞こえたのかもしれません。

「ところで、ここはどの辺でしょうね」

言われて辺りをキョロキョロします。全く分かりませんでした。横浜を抜けたのかどうかすらも、です。

そして、先程の自分の問いの答えが唐突に分かった気がしたのです。

 

恐らく、安心しきっているからでしょう。

道順だけでなく、走り方も走行における肝心な判断すらも、全て彼に任せて頼り切ってしまっていたのです。

そのため、いつも一人だと緊張状態で感じることの出来ない『楽しさ』を、一緒に走ることで感じることが出来たのです。

でも、それは間違っているのでは──?

現に私は、一人で走る時には必ず見る標識を、Sさんと一緒の時にはほぼ見ていないことが発覚しました。だから現在地を聞かれても分からなかったのです。

これではいけないと思いました。

ちゃんと一人でも楽しく走行出来るようにならなければ、と。

 

市内に戻り、いつもの『反省会』を終えると別れの挨拶をします。私は前回よりは少しだけ慣れた手つきでSさんに手を振りながら、決意したのです。

もっと走ろう。

恐れも不安も、一人で走り続けることでしか払拭出来ないのでしょうし、その先にしか成長もないのでしょう。

どの道を走っても楽しく安全に走行出来るよう、もっといっぱい走って経験値を上げていこうと思いました。

 

この日私は、街中を軽快に走行するSさんの走りを脳内で反芻させ、自分の走りに取り入れる方法を考えながら眠りについたのでした。