湖畔の細道を走りながら、しばらく霞ヶ浦を堪能しました。
車通りはおろか、人通りもほとんどない小道です。マイペースにゆっくりセローを進め、景色が良ければ停止して眺め入ります。
そうこうしているうちに、日が高くなってきました。
「あれ?」
そう。陽の光が強まると共に、景色の様相が変わったのです。
あれほどまでに魅了してきた湖畔の絶景が、普通の『綺麗な景色』へと変わりました。
ほんの僅かな時間、多くの条件が重なることで拝むことの出来た、奇跡の風景だったようです。
田園を抜けて街中に戻ります。
目指すは『霞ヶ浦総合公園』です。
名前の通り、霞ヶ浦に面した自然豊かな公園で、季節の花も楽しめます。園内にはプールや、野鳥や魚を展示しているネイチャーセンターがあります。水生植物園では、霞ヶ浦の豊かな自然を観察できます。また日帰り入浴施設やレストハウスもあるため、ファミリーで来ても一日中楽しめる公園のようです。
公園駐車場にセローを停め、公園内の散策です。
お散歩やジョギングをしている人だけでなく、野球の練習をしている子供たちもいました。
緑豊かな公園に癒されます。
園内の入浴施設に惹かれていましたが、残念ながら午後からしか利用出来ないようでした。
湖のすぐ近くに水車がありました。
夜になるとイルミネーションも綺麗なようで、電飾が施されています。
ひとしきり散策し、公園を後にします。
次なる目的地を目指しセローを走らせていると、マスツーリング中と思しきグループと一緒になりました。
抜かすのかと思いきや、後ろに付いているので何故か私が先頭を走ることに。少しだけ緊張しながら運転します。
天気も良く日差しもあたたか。
確かに今日は絶好のツーリング日和です。
昨晩、夜の走行で感じていた茨城の道の魅力を、今この走りでも実感しました。そして太陽の明かりの恵みを受けて、景色も堪能出来ます。
──やっぱり、気持ちいいなぁ。
何度かステップに立ち上がり風を受けながら走行します。
霞ヶ浦大橋を渡り、すぐの道の駅へと入ります。
いつの間にか後ろのツーリンググループもいなくなっていました。
『道の駅たまつくり』です。ここも、湖畔のすぐそばにある道の駅なので行ってみようと思っていました。
中に入ると新鮮な地元野菜が売られており、その奥に食堂があります。食券を購入し、ようやくの朝ご飯です。
食券を渡す際、店員さんと世間話をします。話題はやはり、コロナウィルスのことでした。
「あれの影響で、やっぱりお客が少ないのよねぇ」
と嘆いていました。
そういえば、いつも混雑している都内の道もスムーズに走行出来ました。某テーマパークも臨時休園しているからでしょう。
そんな中でも営業して下さっているサービス業の方々に、心から感謝の念を抱きます。
湖を眺めながらの食事は素敵でした。
食事を終えてセローの元に戻ると、たくさんのバイク乗りさん達が集まっていました。
確かに霞ヶ浦近辺の道は、バイクで走ると気持ちいいのです。この辺りは、茨城のツーリングスポットなのかもしれません。
名残惜しさを感じつつ、霞ヶ浦に別れを告げて走り出します。
行先は牛久市。前々から気になっていた、全長120mもの大仏を見に行きます。
牛久市へ向かうルートも素敵な道でした。
しばらくセローを走らせていると、山間の裾野から見える大きな大きな背中。
「おぉ〜」
大仏様の後ろ姿です。
そのあまりの迫力に思わず感嘆の声が漏れます。
誘導により、駐輪場にセローを停めます。
この大きさと威厳とを、間近で拝見したいと入口へ向かうわけですが、その手前に張り紙がされていました。
最上部に行ってみようと思ったのですが、ここもコロナウィルスの影響により自粛していました。
せめて3階までの拝観をしようと思いましたが、そんな中途半端なことをするより、ここも楽しみを先延ばしにして、また今度来ようと思ったのです。
とりあえず今日は、遠くを走りながら大仏様のお背中を拝見出来た、感動と喜びを噛み締めることにします。
全てのルートを巡り終わったので、帰路につきます。
種々の理由により予定よりまだだいぶ時間も早いのですが、明日も仕事であることを考えると、早く帰るのも悪くないと思ったのです。
茨城を出て千葉県に入り、もはやすっかり走り慣れた道、湾岸道路に入ります。
走りながら、思いました。
──出来すぎている。
そう。今回のツーリングは、何もかもが完璧でした。
天候に恵まれた2日間。心温まるエピソードに終わった、危険性のないヘルメットのトラブル。素敵なお店とそこでの出逢い、偶然巡り合えた絶景。
そうして運転しながら、以前までのガチガチの緊張感を感じなくなっていることにも気付いたのです。リラックスした状態で、ごく自然に多くのことを認識しながら運転しています。
でも、この感覚は気のせいなのでは?
本当に視野が広がっているのか、運転に慣れてきたことによる気の緩みなのかが自分では判断がつきません。
今回のこの完璧ともいえるツーリングに、最後の最後でなにかが起こるのではないかと、自宅マンションの駐車場に帰り着くまで気を張り詰めていました。
『それは成長しましたね』
約2時間の洗車を終え、自宅ソファーに落ち着いてSさんに帰還報告を送るや、そう言われました。
『え、そうなのかな?』
でも確かに、少し前の私だったら調子に乗っていたのかもしれません。ですがその度に、立ちゴケやら何やらが起こり猛反省することになったのです。
『だってホントにバイクって、調子に乗らせてくれない乗り物だから』
私がそう言うと、Sさんも同意してくれました。
初の泊まりロングツーリング。
泊まりでしか出来ないことは、正直あまり実現は出来ませんでした。
でも、日帰りでは難しかった距離を走ってくることも出来、また一晩ゆっくり休んだことで帰りも万全な状態で走行することが出来たのかもしれません。
ともあれ。
この先のバイクライフにおいて、長距離を走るのなら、宿泊は必須になってくるのかもしれません。
今回のツーリングでは、そのいい予行演習が出来ました。