埼玉、吉見町へのツーリングを終え、少しだけ街中走行への自信が湧いてきた私は、正月三が日もようやく過ぎた4日、いよいよ千葉への走行を試みます。
Sさんからの課題は、『船、高速、有料道路を使わず、下道で千葉まで行くこと』。
ルートは横浜市内と東京都の中心地を走り抜けるものとなります。
車の流れも多く道も複雑に入り組んでいるので、念入りに下調べをしました。
いきなり千葉の奥にまで行くのは難しいと思うので、まずは練習がてら、千葉に入るまでのルートで予定を組みます。
今回は余裕を持って行くつもりだったので、お弁当も用意しました。
まずは国道1号線を進んで横浜市内に入ります。ここまでは以前、Sさんと横浜市内を走った時に通った道です。
やがて環状2号に入り、初めての道です。片側3車線の大きな通りでした。10数kmほどをひたすら直進し、『三ツ池公園入口』を右折します。
三ツ池公園を最初の目的地に決めていました。
横浜市内なので近いのですが、ルートからそう外れていなかったのと、ツーリングマップルを見てずっと気になっていた公園だったからです。
三ツ池公園は『桜百選』に選ばれていました。
いずれ桜の季節になったらお花見ツーリングに行こうと、二輪免許取得前から決めていた私は、その下見も兼ねて行ってみたいと思っていたのです。
駐車場も広く、二輪車は駐輪無料というのも惹かれたポイントの一つです。
公園は広く、整備も行き届いていました。
中央に大きな池があり、それを囲うように花壇や木々や広場があります。人工的な川もあり、夏場はそこで子供たちが水遊び出来るようです。
でも季節は冬なので、花壇は土が見えるだけ、木々の葉っぱも全て落ちてしまっていました。
やはりここも、春以降にまた来た方がいいのかもしれません。
公共の場所ですが、大きな公園だからでしょう。謎めいた細い階段や小路、草木の生い茂る所や急勾配などもありました。冒険の森、という惹かれる場所もあります。
ゆっくりと散策し、芝生でいつもの筋トレです。
充分に堪能し、出発です。
まずは県道140号線を進んだのち、国道15号線に入ります。別名、第一京浜です。
背の高いビルも目立つようになりました。
さすがに道幅も広く車線も多かったのですが、空いていました。
5車線にもなる道を右折する時、交差点には私の他には乗用車が一台しかいませんでした。「こんなに車線いるのかな?」と思ったくらいですが、先の吉見町ツーリングでも16号線が空いていたので、これも年始だからなのでしょう。
やがて、東京港臨海道路を進みます。
海中トンネルを走るのは初なので、なかなかに刺激的でした。
映画『シンゴジラ』の冒頭で、海中トンネルが崩れるシーンがあったなぁと走りながら思い出し、少しだけ身構えてしまいます。でも、実際そうなったらどうすることも出来ないので、すぐにそのイメージを振り払いました。
トンネルを抜けると大きな橋が目に飛び込んで来ます。
「おぉ〜」
思わず歓声を上げました。
東京ゲートブリッジです。間近で見るとかなりの迫力でした。
そのまま走り進み、ゲートブリッジを渡ります。東京湾を見下ろしながらの走りは爽快でした。
でも橋の上はかなり風が強く、セローが激しく横揺れしだします。
私はいつものように、踵と膝でセローの車体を強く挟み込み、少し腰を浮かせて上体を下げます。ステップに体重を乗せることで重心が下がり、車体が安定しやすいのです。
それでもかなり横揺れしていますが、私は「あはは、結構揺れるねぇ」とセローに話しかける余裕すらありました。
軽量で車高のあるセローはすぐに揺れてしまいます。
特に女性は、男性に比べ体重も軽いので風の影響を受けやすいそうです。これまで何度もその揺れに恐怖心を抱きましたが、走り続けることで日に日に慣れてきたようです。
橋を渡りきると、次なる目的地『若洲公園』を目指します。地図上ではすぐの筈です。交差点を左折し、その方向を目指します。
が、警備の人らしき男性から止められてしまいました。
「どちらへ行かれるんですか?」
「若洲公園です」
「あぁ、でもこっちを進んでも行き止まりですよ」
「えっ、そうなんですか?」
警備の男性が、若洲公園入口までのルートを教えてくれました。お礼を言って、Uターンして教えられた方へ向かいます。
やがて到着した若洲公園。
そこも有難いことに、バイク駐輪は無料です。
この公園は私が調べたのでなく、Sさんが教えてくれた『お弁当スポット』でした。
東京湾を眺めながら食べるお弁当はさぞや美味しいだろうなぁと思ったのですが…。
「う〜ん、さすがになぁ」
時刻は午前10時過ぎ。お昼ご飯にするにはいくら何でも早すぎました。
朝ゆっくり家を出て、三ツ池公園でものんびり散策と筋トレをしてきたというのに、だいぶ早く着いてしまったのです。すごく遠いイメージでしたが、距離的にはだいぶ近いのかもしれません。それとも、道が空いていたからでしょうか。
お弁当は諦め、ドラムバックに置き単身で公園内を散策します。
先程渡って来た、東京ゲートブリッジを眺めることが出来ました。
釣り道具の貸出しをしているので、東京湾での釣りを楽しむ人達で溢れています。
サイクリングコースもあり、自転車のレンタルもしているようです。キャンプ場も併設されていました。
歩き進めると、遊具のある広場に出ます。
戯れる子供たち。揺れる木々と芝生の青さ。サイクリングロードでは、幼女が自転車の練習をしており、お父さんが自転車を支えながらエールを送っています。
のどかだなぁと、しみじみ思いました。
──東京都の中心地を走り抜ける、今回の大都会ツーリング。
さぞや喧騒にまみれた忙しないものになるのだろうと覚悟していましたが、案に相違してゆったりと時間の流れる、のどかな走り出しとなったのでした。