アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

初めてのバイク〜実走編①〜

Sさんのタンデムにより、あちこち連れて行ってもらうことになった私は、すっかりツーリングの虜となっておりましたが、正直それで満足していました。

だってタンデムシートから見える景色も感じる風も、充分に美しく心地よく、走り抜ける爽快感だって申し分なかったのです。

依然として、私の中でバイクは「若い体力のある男性の乗り物」でした。

それに家計の事情だってあります。

うちには車がありません。それは家計に余裕がないからというのもありますが、夫が頑なに車を所有することに反対してきたからです。

住まいは電車の路線が充実し、それすらなければバスで移動出来る都市。日常生活に困らないと言えば困らないのは確かですし、車所有にかかる維持費が無駄と言われれば確かにそうなのかもしれないと黙るしかなかった私。

電車やバスでも行けないような、自然豊かな道を、気軽にドライブしたいという願望は長年持ちつつも、私の人生ではもうそれほ無理なのだろうと諦めかけていました。

例え車がバイクになるのだとして、初期費用や維持費等、お金がかかるのは同じことだろうと思ったのです。

買い物は、かかる金額が大きければ大きいほど、配偶者の許諾がなければ実現出来ません。夫婦間に価値観の相違があるとより困難になります。

夫は海にも行きたがらず、山を見てもつまらないと言い、煌びやかなテーマパークや賑やかな繁華街に家族を連れ出し、お金をかけて楽しむことに重きを置く人でした。対して私は、住宅地から抜け出して広がる海や緑豊かな場所でのんびり時の流れを感じたかったのです。

 

そう言えばこんなことが。

子供がまだ小さい時に、緑豊かな自然公園へのお出かけを提案したことがあります。電車とバスで向かい、お昼には敷物を広げて持参したお弁当を家族みんなで食べよう、と。それは実現しましたが、夫は終始不機嫌で、ずっと携帯電話を弄り回し、ついには声を荒らげてきました。

曰く、なんの時間なのか分からない、と。

スケジュールを詰めて動くことは得意な夫ですが、アトラクションも何もないただ大きな公園では、何をどう楽しんだらいいのか分からないようでした。

子供と遊ぶ、景色を眺める、会話を楽しむ、のんびりと過ごすそういった時間そのものが、夫にとっては全て無駄なことのようでした。

ずっと憧れていた、家族でアウトドアに行ってみたいと提案した時も当然却下され、私の人生で認められる旅行と言えば、夫の認可する新幹線や飛行機、電車やバスで行ける範囲にある有名な観光地巡りのみ、そして認められるレジャーと言えば、人混みの多い街中に建ち並ぶ百貨店や華やかなテーマパークのみ、外食は慌ただしく掻き込む飲食店のみとなりました。

 

それはそれで私も楽しかったのです。

家族で笑い合い、色んな刺激もあったので。夫の希望するレジャーの在り方は、別に間違ってはいないと今でも思います。

価値観の相違は、どうにもなないことでした。

 

そういった背景もあり、バイクに惹かれつつも諦めていました。

 

でもここで終わらないのが伝道師さんの凄いところ。

まず一つ目。

バイクは若い体力のある男性の乗り物だと思い込んでいた私に、女性ライダーの多さや、様々な年代の方々が乗りこなしている事実を教えてくれました。

そして、日頃から筋トレやジョギングをして鍛えている私なら充分に乗りこなせると根気強く諭し、バイクに乗る自信を徐々に持たせてくれました。

次に、具体的にかかる費用。

車の免許だけは持っていたものの、二輪免許も持っていなかった私に、免許取得にかかる費用を提示。その他、税金、ガソリン代、保険料、車検費用。バイクを持ったらかかる諸々の費用を、バイクの種別で詳しく解説。

ひとしきり教えてもらった上で思いました。そのくらいの金額なら、私の稼ぎだけで充分賄える、と。

主婦業の傍らフルタイムで働いている私は、自分の自由になるお金もありました。バイクを持つためににかかる諸々の費用は、その範囲内におさまりそうでした。

 

急に現実味を帯びてきたバイク乗りへの道でしたが、それでも踏ん切りがつかなかったのはやはり、運転することそのものへの不安感でした。

車の免許すら取得後十数年、一切運転せずペーパードライバーでやってきた私です。運転が難しそうな二輪を、自分が乗りこなせる自信はとても持てなかったのです。

 

さて、ここからが伝道師Sさんの凄いところです。

 

実際に、私にバイクを運転するよう薦めてくれたのです。