アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

無益な殺生〜長野ソロ泊まりロンツー②

ガソリンスタンドを後にし、国道152号線を走り進んで行きます。

 

国道ですが、山道でした。当然片側一車線です。急勾配とカーブも続きます。

私は時々景色を見ながらセローに無理のない速度で登って行ったので、後続車が来たら道を譲るようにしていました。

ツーリング中らしきバイクも多かったです。ヤエーしてくれる人もいて、喜んで手を振り返します。

 

峠道にありがちな、暗くじめじめとした空気は全くありません。明るい陽射しの入り込む、のどかないい道でした。

結構登ってきたらしく、見下ろすと街が小さく見えます。

 

 

やがて県道210号線に入りました。

「おぉっ」

 

そこは県道ではあるものの、そこそこ難易度の高い林道でした。

『林道新山線』というらしいです。

 

細く暗い、激しい急勾配と急カーブが続く道です。

車一台が何とか通れるくらいの道幅でしたが、幸いなことに対向車はほとんど来ないようでした。後続車もいません。

かろうじて舗装路ではあるものの、道はガタガタで所々砂利も散らばっています。それは一番滑りやすい路面状態なのです。

気を引き締めます。

 

ここで転倒したら、自分一人ではバイクを引き起こせないんだろうなぁ。

 

急勾配と足場の悪そうな路面を見やり、苦笑しながらそう思います。

それでも、怖さは感じませんでした。

むしろ先々の予測が着かない道の展開に、ワクワクします。

 

 

f:id:qmomiji:20200611175834j:image

 

最近林道仲間から林道ツーリングに連れて行ってもらっているからでしょう。

このような道の運転にも、だいぶ慣れてきているのかもしれません。

 

 

…と。

ポトン、と何かがヘルメットにぶつかります。

 

なんだろう? 木の実とかかな。

 

さほど気にせず進んで行きます。

両側に木が生い茂る細い道です。木々のトンネルをくぐりながら走っていました。

ポトン、とまた腕に何かがぶつかって落ちます。

なんかよく落ちてくるなぁ、と深く考えずに進み、その後も何度かぶつかる感覚がありました。

そのうちの一つが、腿の上に落ちて止まったので、チラリと見ます。

 

それは毛虫でした。

 

木から毛虫が落ちてきているようです。

「よっと」

私は足を動かし、腿の上の毛虫を地へと帰しました。

 

セローの後輪で踏みつけなきゃいいけど。

 

それだけが気がかりでしたが、停まることなくツーリングを続行します。

 

 

道を横切るように、大きな枝が落ちていました。

ハンドルを切って避けるより、踏んでしまった方が安全そうです。そう判断し、そのまま直進します。

ところが、乗り上げる直前、その「枝」がうねったのです。

 

蛇でした。

 

一瞬、急ハンドルか急ブレーキを掛けて避けるべきか迷いましたが、それは危険だと判断し、結局そのまま乗り上げることに。

「あぁ〜、ごめんなさいっ」

ミラーで確認すると、蛇はまだうねっていました。

それは元気な証なのか、断末魔の身のよじりなのか。

私には判断が付きませんでした。

 

虫も爬虫類も、大量発生したり攻撃して来ない限りは大好きな私です。

仕方ないとはいえ、どうにも心が傷みました。

 

 

ここで、インカムで聞いていたラジオが停止します。

電波が届かないのでしょう。

案の定、ナビもフリーズしました。

山奥だから仕方ないのかもしれません。

 

 

そんなトラブルがありつつも。

 

ようやく出てきた『陣馬形山キャンプ場』の標識。

標識の示す通りに右折します。

「あれ?」

そこは綺麗な舗装路でした。

でも事前情報では、ここから先は魅惑的なダートの筈なのです。

そのダートを走るのも楽しみの一つでやって来たのですが、新しく舗装されてしまっていたようです。

 

 

林道を走るようになってから、道も地形も流動的なんだなぁと思うようになりました。

特に林道は地図の通りに進んでも、土砂や大木で道が塞がれていて進めなかったり、逆に整備され綺麗な舗装路になっていたりもします。

道の先が唐突に崩壊してしまったり、整備され新しく出来ていたり。

公道だったら事前に分かりうることですが、中々林道の情報までは開示されません。

 

そこがまた困難でもあり、魅力的でもあるのです。

 

 

ともあれ、舗装されたばかりのその道は、今までの県道よりもずっと走りやすくて安心出来る道でした。

 

木々の間から見える景色が素晴らしく、期待値が徐々に高まります。

 

 

やがて到着した『陣馬形山南アルプス展望台』。

 

f:id:qmomiji:20200611174516j:image

 

「おぉ〜」

 

雲が多かったので、残念ながら向こうの山々までは見渡せませんでした。

 

でも広がる景色は絶景でした。

よく考えたら、数日前まで今日は雨予報だったのです。

一切降られることなく、何とか晴れて展望台に来る事が出来ました。

 

 

切り株があったので、そこに腰掛けお昼ご飯です。

サンドウィッチをもう一つ食べます。

「ん〜」

この瞬間がたまりません。

 

案の定、人はほとんどいませんでした。

この場所がこんなに静かなのは、珍しいのかもしれません。

貴重な体験が出来ました。

 

 

休憩を終え、来た道を引き返します。

途中、『道の駅 南アルプスむら長谷』に寄り、さくらソフトクリームを食べ休憩を取り、諏訪湖方面に向かいます。

 

諏訪湖北アルプスが望めるという、『立石公園』に到着しました。

 

f:id:qmomiji:20200611175459j:image

 

大きな時計塔にも登ってみました。

 

眺めながら、諏訪湖周辺を巡ってみたくなり、下に降りるや適当にセローを走らせます。

 

ツーリングをしていると、水のある所を巡ってみたくなるのは、生命の神秘に触れたいからなのでしょうか。

 

湖のほとりで釣りをしている人、サッカーをしている人達を微笑ましく眺めながら諏訪湖周辺を一周します。

 

 

日も傾いて来たので、予約していた宿にチェックインです。

簡素な部屋でしたが、一人用ならば充分でした。

 

 

バイクは宿に駐輪させたまま、徒歩で夕飯を食べに行きます。

信州といえば、やっぱりお蕎麦。

一軒のお蕎麦屋さんに入ります。

 

「おひとり様ですか?」

店員さんの質問に、はいそうですと応える私。

わりと慣れたやり取りです。

女一人でも奇異な目で見られることもないため、いい時代になったなぁと思います。

注文したのはお蕎麦セットと、もちろんこちら。

 

f:id:qmomiji:20200611202640j:image

 

f:id:qmomiji:20200611202656j:image

 

泊まりロンツーの醍醐味は、やっぱりお酒だろうとビールを注文します。

 

普段は「おひとり様」を堪能する私ですが、さすがにこの時ばかりは一緒に乾杯する相手が欲しくなりました。

 

仕方なしに空中にジョッキを向けて小さく「カンパイ」と言い、半分以上を一気に飲みます。

 

最高でした。

蕎麦も美味しく、セットのミニ天丼も出汁が利いていました。

 

泊まりロングツーリングの醍醐味を存分に堪能しつつ、ロンツー初日の夜は舌鼓を打って過ごしたのでした。