アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

倒けつ転びつ〜奥多摩林道 ①

10月第4週の日曜日。

 

セローに跨るや、東京郊外へと赴きます。

 

最近、待ち合わせ場所までは高速道路を使うことが多かったのですが、その日の集合場所は東京都内だったので、ツーリング気分を味わいながら下道でのんびり2時間かけて向かいました。

 

天気も良く、私もセローもコンディションは良好です。

ウキウキしながら東京都内を突っ切ります。

 

 

集合場所に到着すると、既に2台のセローが駐輪されていました。

隣に横付けし、お二人に挨拶します。

「おはようございます」

「おはようございます、すぐに場所分かりましたか?」

主催者の、THさんです。

「はい! …あ、ナビのお陰ですけど」

その隣の男性も会釈をしながら、

「今日はよろしくお願いします」

と挨拶してくれます。AOさんです。

私も同じ言葉を返してお辞儀をしました。

 

 

今日は初めて、SNS外で知り合った方々と一緒に走ります。

 

主催者のTHさんは、もうかれこれ数十年以上もオフロード走行をされているのだとか。

 

今回一緒に林道ツーリングに行こうと企画して下さったので、ご一緒させてもらうことにしたのです。

 

 

その企画に、AOさんも参加されました。

AOさんのバイクもセロー。

バイク歴は長いものの、セローは購入してまだ一年弱だそう。

「オフロードでは初心者ですよ」と仰るので勝手に仲間意識を持っていましたが、聞けば既にオフロードコースを走ったり、一人で林道を走ったりもしているそう。

私などとは比べ物にならないくらいのベテランさんなようでした。

 

 

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「じゃあ行きますか」

「はーい」

出発です。

3台のセローが走り出します。

 

 

山道を登り細道に折れるや、すぐ砂利道となります。

一旦バイクを停めタイヤの空気を抜き、いよいよ林道ツーリングの始まりです。

立ち乗り姿勢を取りました。

 

 

今日は私やAOさんの為に、初心者コースに行くと言って下さっていました。

私も初心者とはいえ、林道ツーリングそのものは初めてではありません。どこか気楽な気持ちで付いて行きます。

 

 

ところが。

 

 

あっ、と気付いた頃には転倒していました。

大きな石にタイヤを取られたのです。

私の真後ろを走っていたAOさんも後ろで転倒します。

私を轢くか自分も転ぶかの2択を迫られ、自ら転倒する道を選んでくれたようです。転倒したまま、すぐにクラクションを鳴らしてくれます。

『転んだらクラクションを鳴らして知らせるように』とTHさんから言われていたのです。

私は転んだショックで、そんなことなどすっかり失念していました。

 

AOさんは自分のセローを引き起こしていましたが、私は自分のセローを起こせませんでした。

傾斜している砂利道、セローの重さが何倍にも感じられます。

 

 

「大丈夫ですか?」

引き起こしの終わったAOさんと、戻って来てくれたTHさんとで私のセローを引き起こしてくださいます。

「はい、大丈夫です。すみません、ありがとうございます」

転倒の衝撃でセローのエンジンがかかりません。

「えっ!? なんででしょう?」

「大丈夫です、よくあることなんですよ」

THさんが冷静に対処してくださいます。

 

 

ようやくエンジンのかかったセローに跨り、気を取り直すようにして出発します。

ところが、ものの数メートルで再び転倒してしまいました。

今度は距離を取って走っていたAOさんが、すぐさまクラクションを鳴らして降車し、引き起こしを手伝ってくれます。

「すみません、ありがとうございます」

「大丈夫ですよ。お怪我はないですか?」

「はい」

 

気持ちを切り替える間もなく、数メートルもいかないうちに、またも転倒です。

 

一体、何故?

 

今度は段差にタイヤを取られたのではなく、エンストによる転倒でした。

茂みの中へと倒れ込んでしまいました。しかも脚をセローの車体に挟まれ動けません。

 

 

二人がまたも助け起こしてくれましたが、さすがに申し訳なくなります。

「すみません、ホントに…」

私のせいで、二人共ろくに林道ツーリングが出来ていません。

ここで少しでもお二人の表情からウンザリした様子が伺えたなら、もうリタイアして帰ろうと本気で思ったくらいです。

今日走る予定の林道は4本なのに、まだ1本目の中間地点にも達していません。

ですが二人とも、さも当然のことのように私に手を貸してくださいました。

 

その先は行き止まりです。

通り抜けの出来ない、ピストン林道のようでした。

引き返す前に、バイクを停めて休憩を取ります。

 

 

「気にしないでくださいね。大丈夫ですか?」

THさんが聞いてきます。

「はい、どこも打ってないみたいです」

「メンタルは?」

…メンタル?

「一回転倒しちゃうと、自分が思っている以上に精神的ダメージを負っちゃうんですよ」

そう言われてみれば、私はちょっと冷静さを失っていました。

「そうそう。オフロードって、舗装路とは全然感覚が違いますよね」

AOさんもすかさずフォローしてくれます。

「僕も初めて林道行った時、コケまくりました。正直、ショックでしたよ。バイク歴も長いし、運転には自信があったのに」

ショックすぎて、その時はたった一時間で帰っちゃったのだと笑いながら言いました。

 

 

懸命にフォローしてくださるお二人を見て、このまま帰っちゃいけないと思いました。少なくとも、『もうメンタルがやられたから帰ります』とは情けなくて言えません。

せっかくなので何かしら学んで帰りたいと思ったのです。

 

でも、一体なんで転んじゃうんだろう?

 

今更ながら、考え始めました。

今までの林道ツーリングと何が違う?

 

見渡して、少しだけ検討がつきました。

今まで連れて行ってもらった林道はフラットでしたが、ここは結構な傾斜でした。

転がっている砂利も一つ一つが大きく、所々の陥没も激しめです。

要するに、ここは今までの林道よりもレベルが高いようでした。

 

「あの」

タバコ休憩をとっていたお二人に声を掛けます。

「転ばないように走るにはどうしたらいいんでしょうか?」

呆れられるかと思いましたが、二人とも真面目に考えてくださいました。

「立ち乗りで踝(くるぶし)グリップして身体でバランスを取ることと…。あとはスピードを落としすぎないこと…ですかね? 」

AOさんが応え、

「そうそう。エンストしない為にはある程度スピードを出しておいた方がいいです。あとスピードが出ていることで、多少の凹凸でもバランスが崩れにくくなります」

THさんも教えてくれます。

「そうなんですよね。僕もオフロードの先輩から、『登りでバランス崩しそうになったらまずアクセルを開け』って教えられましたよ」

 

 

ふむふむと脳内メモ帳に明記していきます。

 

そうして深呼吸をして、この先のダートを走り続けていくイメージを持たせました。

 

それにしても。

 

改めて思います。

バイクは元々危険な乗り物ですが、恐怖に呑まれて不必要にスピードを緩めれば、たちまち転倒してしまうのです。

こと、オフロードでは尚のこと。

 

 

進め、負けるなとセローが語りかけて来ているようで、少しだけ心強く思えました。