アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

優しさのボルト〜泊まりロンツー②

ホームセンターに到着するや、ヘルメットを手に店内に入って行きます。

Sさんの言う通り、たくさんの種類のボルトがありました。

ですがたくさんありすぎて、どれがこのヘルメットに合うのかが分かりません。

しかもどのボルトも、数本一組で小袋に入れて売られていたので、どれがヘルメットに合うのか確かめようもなかったのです。

 

「あのぅ、すみません」

私は傍にいた店員さんに声をかけ、事情を話して相談してみます。

その店員さんが担当の人を呼んでくれ、やがて男性店員がやって来ます。

「そうですねぇ。ちょっと、ヘルメット見させてもらってもいいですか?」

店員さんが私のヘルメットを手に、その穴に合いそうなボルトを探してくれます。

「ええっと。これか、これですかねぇ?」

合いそうなボルトをいくつか手に取るや、なんと商品の小袋を破って開封し始めました。

そしてヘルメットのボルトの穴に実際入れていって確かめてくれたのです。

「すみません、大事な売り物を」

「いえ、大丈夫ですよ〜。あ、これじゃちょっと太いみたいですね。一回り細いのにします」

もうひと袋も開封し、中のボルトを通すやピッタリ合いました。

「でも、これじゃちょっと長さが足りないと思うんですよねぇ。え〜っと、これかな?」

先程のよりもう少しだけ長さのあるボルトを出してきてくれました。

「これで合うと思いますよ」

店員さんが手渡してくれたボルトを受け取り、丁寧にお礼を言います。その上で、更に質問しました。

「これを取り付けるための工具とかはどちらに売ってますか?」

「あ、なんなら僕、取り付けますよ〜」

「え? いいんですか? ありがとうございます、助かります」

レジでお会計を済ませ、早速取り付けて下さいました。

 

「本当にありがとうございました。とても助かりました」

「いえいえ。ありがとうございました。道中お気を付けて」

お辞儀する店員さんに深々とお礼をして、店を後にします。

 

ヘルメットのバイザーとシールドがきちんと固定されました。それだけで、心強く思えます。

これで不快な音とも、いつ外れてしまうのだろうかという不安ともおさらばです。

 

ホームセンターを後にし、バイクを走らせながら思いました。

あのボルトは決して高価なものではありませんでした。一袋100円弱くらいです。たったそれだけの売り上げのために、あの店員さんは親身になって下さいました。

いくつかの商品を開封させてしまいましたし、取り付けまでしていただきました。

それは『店員』だからではなく、『親切な方』だったからなのだと思います。

 

ソロでのツーリングでは、当然ながら出先に知り合いはいません。なので何かが起こっても、基本的には自分でなんとかしなければいけません。

その為いつも気を張りつめていたのですが、今のように親切な方から助けていだけると、まるで砂漠で水源を見つけたかのように嬉しく心強くなります。

 

ご好意に感謝しながら、無事ツーリング再開です。

 

 

 

次なる目的地、茨城県へと向かいます。

県道を出て国道124号線に入るや、銚子大橋を渡って利根川を越えます。

 

この時、前を走っていたバイクのライダーさんが、ステップに立ち上がりながら走行し始めました。

「…?」

それは私もよくやるのですが、悪路を走行する時のみです。ですがこの道は平坦で真っ直ぐ、見通しもよいため、立ちながら走行する意味が分かりませんでした。

景色を見渡し、「あっ!」と思ったのです。

そう、景色です。風です。

立ち上がることで目線も高くなり、それだけ多くを見渡せます。

私は今回のツーリングで、前を走るこのライダーさんの真似をして、見通しのいい所では立ちながら走行していったのです。

ですがこの時は真後ろで真似するのも気が引けたので、大人しく後ろを走行して行きます。

 

橋を越えるや、いよいよ茨城県です。

バイクでだけでなく、茨城県に来たこと自体が人生初かもしれません。

旅行か何かで通過したことはあったかもしれませんが、目的地としてやってきたのは少なくともこれが初めてでした。

新しい土地はワクワクします。

初めて感じる茨城の風、茨城の空気と匂いが、私の気分を否が応でも高揚させてくれます。

やがて県道51号線に入りました。

 

 

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素敵な道です。

こういうのんびりとした道は、真っ直ぐ走るだけでも心が癒されます。

 

犬吠埼よりおよそ100km、次なる目的地『ひたち海浜公園』の標識が出始めました。

さすが国営公園です。20km先から標識が出始めていました。

到着するや、やがて駐車場の表示に従い中に入ります。

ここは二輪も駐輪は有料です。その価値はあると思い、ルートに組み込んでいたのです。

「こんにちは」

料金所の係の方が挨拶してくれたので、私も返します。係の方が続けます。

「すみません。現在、コロナウィルスの影響でイベントは全て中止、閉園時間も早まっておりますが、それでもよろしいですか?」

聞けば、閉園時間まであと20分くらいしかありませんでした。

駐輪代は260円。おそらく、20分では回りきれないくらいの公園です。

「そうでしたか。それでしたら辞めておきます」

頭の中で計算し、元が取れないと踏んだ私はそう決断を下しました。

係の方は慣れているのか、「では、そちらでUターン出来ますのでお出口へどうぞ〜」と返します。

 

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中には入れなかったので、駐車場の写真だけを撮ってそこを後にしました。

 

国営ひたち海浜公園といえば、一面に咲き誇るネモフィラが有名です。是非とも生で見たい場所の一つではありますが、どちらにせよ今の時期はまだ咲いてはおりません。

せっかくなのでルートに組み込み下見がてら散策してみようと思っていただけなので、さほどの落胆はありませんでした。

 

むしろ。

「まぁ、また来いと言うことかもね」

そう独りごちて笑みがこぼれます。

花が綺麗に咲き誇る時期に、また来ようと思いました。

私はこうやって、ベストな状態で見れなかった景色や入れなかった場所があったら、また来ようと思うことで楽しみをこの先に設けることにしています。

行きたい所リストが増えていくのは、むしろ大歓迎です。

 

ひたち海浜公園を出てすぐの道も素敵でした。

 

 

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走行中、いい道だなぁと感じても、バイクを停めて写真を撮るのは容易なことではありません。

でもこの道は路肩も広く車通りも少なかったので、バイクを停めて存分に写真を撮ることが出来ました。

 

──茨城もいい所だなぁ。

バイクで行っているからでしょうか。いい所かどうかは、いつも道で感じます。

埼玉ののどかな道も、千葉の表情豊かな道も、ふとした日常で恋しくなるほどに好きになりましたが、この茨城の道も、後できっとそうなるのだろうなぁという予感がありました。

 

 

ですがこの時点では、茨城の魅力をまだまだ分かっていなかったのです。

この後に経験する茨城の魅惑的なロードは、私の脳内に強烈なインパクトを刻み込むことになりました。

 

 

そして、またも素敵な出逢いに恵まれたのです。