アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

夜明けと共に〜埼玉 吉見町 前編

年は明け、2020年の元旦──。

お雑煮を食べた後、私はひたすらツーリングマップルを捲りながらルートを調べました。

Sさんの言っていた吉見百穴は、埼玉県の吉見町という所にあるようでした。

秩父とは少し離れていますが、埼玉に行くまでのルートは途中まで一緒で良さそうです。

 

前回は、国道16号線の混雑に時間を取られました。

でも、今回は正月三が日に走行します。それが果たしてどう転ぶのかが分かりません。もっと混雑しているのか、逆に空いているのか。

考えた末、念の為混雑する時間帯は避けようと決めました。早朝に出て、早い時間に帰路につこうと思ったのです。

 

2日当日の朝──。

5時に起きると、準備をしてすぐに出発です。朝食も食べず、今回はお弁当も作りませんでした。作る時間も惜しく、とにかく早く出発して先に進もうと思ったのです。

 

真冬の早朝です。何枚も重ね着して全身にホッカイロを貼って出発します。

まだ夜中のように真っ暗でした。

うっかり、いつもの近道で林の中を通ってしまいます。街灯もない狭い道、通常のライトでは全く見えなかったので、ここで初めてハイビームを使いました。

通りを抜け、129号線に出ます。充分な街灯にホッとしました。車はほとんどいません。どういう訳か信号にもほぼ引っかからなかったので、ラッキーとばかりにスピードを上げて走行します。

ですが。

「寒い…」

そう、その日の気温は2℃。風もそこそこあります。そこへもってきて、ほぼ停まらず走行していたので身体はどんどん冷えてきました。胴体と足元はホッカイロを貼っていたのでまだなんとか我慢出来たのですが、手が冷えて来ました。

 

今回は129号線をきちんと左折して進みました。更に17kmほど直進します。

16号線に入った辺りで、寒さのあまり指先の感覚がなくなってきました。

たまらず、コンビニに立ち寄ります。

そこで軽めの朝ごはんとホットドリンク、ミニサイズのホッカイロを買いました。

レジの店員さんは風邪なのか、思うように声が出ないようでした。名札を見ると店長さんのようです。他の人は出たがらなかったのかもしれません。正月2日から体調不良を推してのお仕事なのでしょう。

そうやって働いて下さる方々のお陰で、こうして年始早々ツーリング先で買い物や休憩を取らせていただくことが出来ているのです。

そのことに、心から感謝しようと思いました。

 

そのコンビニにはイートインスペースはなかったのですが、外の駐車場に面した所にテーブルとベンチが備えられており、『ご自由にお使い下さい』との有難い貼り紙がありました。

そこで軽めの朝食にします。既におじさんが座ってコーヒーを飲んでいたので、

「ここ、よろしいですか?」

と私が聞くと、「どうぞどうぞ」と快く迎えて下さいます。

「この時期にバイクなんて、寒くねぇの?」

おじさんが、私のセローを見ながら聞いてきます。

「あはは、寒いですよ。今も指先の感覚がなくなっちゃって」

「あぁやっぱりそうなんかぁ」

私はおにぎりを頬張り、ホットドリンクを飲んで体温を上げます。

「でも女一人で偉いなぁ。どこまで行くん?」

私が埼玉までだと告げると、おじさんが昔付き合ってた彼女が埼玉にいたなぁと懐かしそうに目を細めます。

「ところであのバイク、タイヤの感じがオフロードっぽいけど」

「あ、そうですよ〜。オフロードバイクです」

「へぇ〜凄いなぁ。じゃあ荒地でジャンプとかウィリーとかもやってるんか」

いや、それどころかオンロード走行もままならない初心者です。

私は笑いながら否定します。

「お詳しいようですが、バイク乗ってらっしゃるんですか?」

「いやぁ、俺は結局免許も取ってねぇけどよ。昔、原付で富士山まで行ったのよ。いやいや、あれはしんどかった」

給油を5回もしたこと、途中で原付が動かなくなったこと、仲間達とワイワイ行きながら楽しかったことを話してくれます。

おにぎりも食べ終わったので、そろそろ出発です。

「ありがとうございました。あの、記念に写真を撮ってもよろしいですか?」

おじさんは照れながらも撮らせてくれました。

 

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別れ際、「頑張ってな」と手を振ってくれたのが嬉しかったです。

こういうツーリング先での出逢いは本当に貴重だと思いました。

「今日はいいツーリングになりそう」

ウキウキした気持ちでセローを出発させます。

 

 

コンビニで購入したホッカイロをグローブ内に仕込んだためか、その後の道のりは何とかなりました。真っ暗だった空も、どんどん明るくなってきます。

日が昇ると、自然と気温も上がり視界も良好になるため、気持ちも上向きになります。

何より、セローを走らせながら目にする朝焼けは最高でした。

 

走っていて気付きました。

少し前まで苦手な街中走行でしたが、さほどの不安感もありませんでした。少しずつですが慣れてきたようです。

 

16号線は信じられないくらに空いていました。

それは時間が早いからなのか、正月2日だからなのかは分かりません。でも、スムーズな走行はやはり有難かったです。

 

やがて東京都を抜け埼玉県に入ります。

16号線を走りながら、前回秩父に行った時に曲がった交差点を通り過ぎました。今回はそこを直進し、入間市を通り抜けます。

その際、途中の景色があまりにも綺麗だったので、セローを停めて写真を撮りました。

 

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広く長い道に、対向車線にも前にも後ろにも車がありません。自由で開放的な気持ちになります。

真冬のため、両側の田畑に作物は実っていなかったので、また違う季節に来てみたいと思いました。

 

 

自分で調べたルートは相変わらずスクリーンに貼っているのですが、私はそこに記された情報だけでなく、標識や看板をよく見て現在地や進行方向をちゃんと把握しようと務めました。

なるべく地名も覚えたいと思ったのです。

 

その理由は後に明かします。

 

 

やがて県道407号線との合流地点で左折します。

鶴ヶ島市坂戸市を抜け、ついに吉見町に入りました。

実はここから先のルートがあやふやでした。目印となるものや交差点の名前もなかったのです。何度か道端に寄って停め、地図を確認して進みます。

ですが、この辺りの景色ものどかで綺麗だったので心が和みました。

そうして目的地に到着します。

 

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本日最初の目的地、高負彦根神社です。

まずは参拝をします。

そして『ポンポン山』の異名を持つ、裏側の丘を登ってみました。

「おぉ〜」

なるほど、と『ポンポン山』の名前の由来を納得し、一人何度も往復してしまいました。

更に先へと進み、その丘の上から見下ろした景色も見事でした。さすがに叫ぶのはご近所迷惑なので控えましたが、その誘惑に駆られるくらいにここも開放的な気持ちになれるいい場所でした。

 

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引き返して境内を出ると、ちょっとした芝生の広場があったので、しめしめとばかりにブリッジです。

 

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今回、お弁当を持ってこなかったので敷物を持って来るのも忘れてしまいました。

なので、筋トレはブリッジのみに留めておきます。

 

セローの元に戻り、次なる目的地へと移動します。

いよいよ、吉見百穴です。

そして、そこでもまた素敵な出逢いがあったのです。