アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

ホッ。とミルクとライダーと〜泊まりロンツー③

国営ひたち海浜公園を出てから、ほんの20分弱ほどの距離に、次なる目的地がありました。

 

本当にここにあるのかなぁ?

不安になりながら走行するも、大きな看板を見つけたのでホッとしながら敷地内へと入ります。

 

 

f:id:qmomiji:20200306172931j:image

 

『カフェ シャリン』さんです。

 

ここはSさんおすすめのライダーズカフェです。

今回のツーリングでのルートをお伝えしたら、ひたち海浜公園のすぐ近くにあると教えてくれたので、急遽ルートに組み込みました。

 

実はライダーズカフェ自体が初めてでした。

少しだけ緊張しながら店内に足を踏み入れます。

「いらっしゃいませ〜」

男性の声が響きます。

 

カウンター席とテーブル席とがあるようでしたが、カウンター席は常連さん達で賑わっていました。

私が躊躇っていると、カウンターの向こう側に立っている男性が、

「あちらのお席へどうぞ〜」

と、広いテーブル席を指しながら笑いかけてくれました。

このお店のマスターでしょう。

 

席に着いてメニューを見ます。

お食事メニューも美味しそうでしたが、今はお茶の時間です。

疲れていたのと、小腹も空いていたのとでケーキセットを注文しました。

 

暖炉は薪をくべて火を起こすタイプのものでした。今日初めてのあたたかな空間に、張り詰めていた気も自然と緩みます。

 

店内に流れるBGMと、マスターや常連さん達との軽快なやり取りとが耳に心地よく響きます。

和やかだなぁ。

しみじみと、私はこの空間が好きだなぁと感じました。

 

椅子もテーブルも、ただの飲食店のそれでなく、ゆったりとしたソファーと重厚なテーブルとが上質なインテリアを演出していました。

それが、不思議な安らぎを与えてくれるのです。

店内のそこかしこには、バイク関連のポスターや備品が装飾されているのですが、それがこの空間に違和感なくマッチしています。

 

「はい、お待たせ致しました〜」

注文していた、チョコムースケーキと、ホットミルクが運ばれて来ます。

 

 

f:id:qmomiji:20200307090730j:image

 

 

「あのぉ。初めて、でらっしゃいますよね?」

マスターがおずおずと聞いてきます。

「あ、はい。そうなんです」

「どちらからいらっしゃったんですか?」

「湘南です。神奈川の」

「えっ?」

何かを確認するため、急に振り返るマスター。向き直り、

「泊まって行かれるんですか? 」

と聞いてきます。どうやら時計を見て時刻を確認していた模様です。

「はい、泊まります」

「あ、そうなんですか」

どこかホッとしたようにそう応えるマスター。

心配して下さったんだなぁと感じ、このマスターへの好意が自然と沸き起こります。

そして今日見てきたものや、私のバイク歴も語りました。まだ免許取得から3ヶ月目のライダーだと伝えると驚かれます。

 

「あ、長々とすみません。ごゆっくりして行って下さいね」

マスターがカウンターの奥へと戻って行きます。

 

 

ホットミルクが、ただの温められた牛乳ではなく、きちんと泡立てられていたことと、好みでシナモンをかけられることに、マスターのこだわりが感じられました。

ケーキも蕩けるほどに美味しかったです。

 

Sさんのイチオシだったので、ちょっと立ち寄るだけのつもりで来てみたのですが、あまりの居心地の良さに思いのほか長居してしまいました。

 

 

お会計を済ませセローの元に戻ると、マスターが見送りに出てきてくれました。

常連の方々とも挨拶します。

「新車のセローなんですね」

さすがバイク好きのマスター、じっくりとセローの車体を観察しています。

ただしスクリーンで少し動きが止まりました。

相変わらずナビを持っていないので、ルートを書いた紙をスクリーンに貼っているのですが、さすがにロングツーリングのため文字がびっしりです。ちょっとそれが呪いの文字のようになっています。

私がそう説明すると、

「ナビなしでここまで来たんですか。凄いですね」

素直に感心して下さいました。

ヘルメットを装着し、セローに跨ります。

「ところで、どちらに泊まられるんですか?」

土浦市です」

大体の場所をお伝えします。

「なるほど。でも、あそこまででも5、60kmはあると思いますよ」

「はい」

笑いながら応えます。

勿論それも、下調べ済みでした。ですが今更その距離で怖気るのなら、ロングツーリングには出ていません。

私のその様子を見て取ったマスターが、「お元気ですねぇ」と笑っていました。

 

「では、ありがとうございました。また来ます」

心の底からそう告げて、マスターに手を振りながら発進します。

 

また来たいと思える場所と、素敵な人との出逢いに感謝し、そこを後にします。

 

 

 

日が沈みかけていましたが、今日はもう一つ、ルートに組み込んでいた場所があります。

ですが、そこへは行こうかどうしようか迷っていました。

次なる目的地は『偕楽園』です。

ここは梅が有名で、時期的にも今、梅が満開なのです。

そしてちょうどこの期間、『梅まつり』が開催されており、夜になると満開の梅がライトアップされます。

 

私は今回の泊まりロングツーリングをやるにあたり、泊まりでしか出来ないことの一つに、遠方で、夜にしか堪能出来ないことを組み込んでみようと考えていました。

だからこの『偕楽園』の梅を、夜に見れるよう時間調整してルートを組んだのです。

ですが、ここもコロナウィルスの影響により、急遽梅まつりは中止となっていました。

そのため、今この時間から行ったとしても、ライトアップされた梅は見れません。

バイクを走らせながら、行こうかどうしようか迷います。

ですが、やっぱり行くことに決めたのです。

梅が満開であることに変わりはありません。

それに、満開の梅がライトアップされていない偕楽園を見ることが出来るのは、逆に今しかないかもしれないと思ったのです。

 

日が沈み薄暗くなった道の向こうに、たくさんのピンク色が浮き上がって見えました。

遠目でも、梅が咲き誇っているのが分かります。

 

f:id:qmomiji:20200307120132j:image

 

昔の人は、夜のお花見といえば月夜の下で行うのが主流でした。

現代は文明の発達により、当然のようにライトアップさせますが、こうして僅かな自然の光だけで眺める梅も、充分に美しいものだなと思いました。

 

時間帯もちょうど良かったです。

完全に日が沈み真っ暗になっていたら、何も見えなくなっていたかもしれません。

 

薄暗がりの中に浮き上がる無数の梅の花々が、今回の旅の成功を予感させてくれているようで、私はいつまでも眺め続けていたくなったのです。