アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

成長の過程〜伊豆、河津桜①

それは2月のはじめ頃──。

 

『来週の日曜日、天気もいいようなので河津桜を見に行こうと思います』

Sさんからのメッセージに、例によって私は、

『おぉ〜、いいねぇ。私も行く』

と答えました。

 

ですが、翌週日曜日といえば私の誕生日。

私は脳内で自分の誕生パーティーとツーリングとを天秤にかけ、僅か一瞬で上記決断を下したのです。

ツーリングに勝る楽しさは、今の私には思い当たりませんでした。

 

 

日曜日の朝。

2℃の気温の中で出発し、待ち合わせ場所で合流します。

「風が冷たいっすね」

顔を合わせるなり、Sさんがそうこぼしました。

「そうだねぇ」

今日は最高気温まで上がってもたったの9℃。

防風ウエアを着ていたので身体は平気でしたが、風も強かったので、ヘルメットから入り込む風は冷たく感じました。

「ところで今日はインカムがないので、ナビは使えません。迷っちゃったらすみません」

とはいえ、伊豆は何度も行ってるそうなので、道は知り尽くしている様子でした。その場でツーリングマップルを開き、軽くルートの確認をするや出発です。

 

 

伊豆は、私が免許を取得して納車2週間後にソロで走りに来た場所です。

懐かしさと共に国道1号線を駆け抜けます。

走りながら思いましたが、やっぱりバイクが多いです。

このところ、凍結の心配のない都内ばかりを走っていましたが、都内ではほとんどバイクは見かけませんでした。

でも今日は、神奈川を抜ける前から多数のバイクと一緒です。

Sさんと私は、マスツーリングをしているらしきグループ達に混ざりながら走り進めて行きます。

 

やがて国道135号線へ。

ここは以前ソロで走って以来、大好きになった道の一つでした。

綺麗な海を眺めながら走る、程よくカーブの続くワインディングロード。

今日は気温こそ低いのですが、快晴により、あたたかな陽射しに恵まれました。

青く輝く海面が、陽の光を受けてキラキラしています。

美しさと気持ち良さから、私は海を眺めては、一人笑いながら運転していました。

 

ですがその一方で、運転を困難にも感じていたのです。

まず先程も書いた通り、自分達以外の多数のバイクが走っています。それらに神経を費やし、またSさんともはぐれないよう、なんとか付いて行きます。気を抜くと、Sさんとの間に他のバイクが入ってきてしまうのです。

それに、Sさんがいつになくスピードを出していたというのもあります。

普段マイペースで走っている私にはかなりキツく感じました。

 

Sさんが海沿いの空きスペースに停車したので、私もそれに倣いました。

「もぉ速いよ〜、めっちゃ怖かった!」

メットを脱ぐや、いの一番にSさんに訴えます。

「でしょうね」

Sさんは涼しい顔で応えました。

「今回、あえてそうしたんですよ。ちょっと、成長具合を見たいと思いまして」

そう返されてしまうと二の句が継げなくなります。Sさんなりの考えがあっての事らしいです。

「まぁ付いて来れなかったら、無理しなくても大丈夫です。俺は前走りながら調整するので」

 

f:id:qmomiji:20200210220840j:image

 

せっかくなのでここで写真を一枚撮り、再出発です。

 

私の言葉を受けたからでしょうか、ここから先はさほどのスピードは出しませんでした。

 

おそらくいつものSさんなら、もっと飛ばすのでしょう。

ということは、今まで一緒に走った時、かなり私のペースに合わせてくれていたことになります。

後ろを走る人の速度に合わせるということがどれほどのことなのか、やったことがないので私には分からないのですが、かなり難しいことのように思えます。

そんなSさんから成長具合を見たいと言われれば、成長した姿をちゃんと見せたいと思いました。

文句を言わずに頑張って食らいついて行こうと決意します。

 

 

 

ここで、過去に走った道ならではの、様々な発見がありました。

 

私は以前のソロツーリングで、熱海で道を間違え『熱海ビーチライン』という、有料道路に入り込んでしまっていました。

料金を払ってその道は楽しく走ったのですが、今日は有料道路に入らず135号線を走り進めなければいけません。

気を引き締めて走りますが、同じ分岐点に差し掛かり標識を見るや、ハッキリと『熱海ビーチライン』の標識があったのです。

今の私が見ると、それは間違えようがないくらい分かりやすい標識なのですが、当時の私はそんな余裕もなかったのでしょう。

 

なんせバイク歴2週間、ソロでのツーリングはまだ2回目。自分の書いたルートを覚えこみ、視野も狭く、標識を見る余裕すらないくらいにいっぱいいっぱいだったのだろうと思います。

 

その一方で、続く急カーブや急勾配を走りながら、よくこんな道を一人で走ったなぁと、当時の自分に感心しました。

教習を卒業したての私が、200kmもの道のりを走り抜けました。しかもちゃんと楽しんで来ることが出来たという事実に、少し自信が付きます。

 

 

前方のSさんを見ながら、そう言えば最近は、ほぼ一人で走ってるなぁと思いました。

Sさんからはタンデムツーリングで、色んな所に連れて行って貰いました。免許取得後も一緒に走っています。

ですが、断然ソロでのツーリングの方が多くなっているのです。Sさんと共に行った場所よりも、一人で行った場所の方が多くなりました。

この伊豆への道ですら、Sさんと走るのはこれが初めてなのです

私はそうやって、Sさん越しでしか垣間見ることが出来ずにいた世界を、一人で堪能することが出来るようになってきています。

 

それが誇らしくもあり、少し淋しくも感じられました。

 

 

やがて伊東市の道の駅、『伊東マリンタウン』 に到着します。

車は行列していて空車待ちでしたが、バイクは優先的に誘導され中に入れさせて貰えました。

バイク駐輪スペースにはたくさんのバイクが停められています。

 

以前伊豆に来た時にもここで休憩を取りましたが、やはりここから見える海は船がたくさんあります。あの時は駐車場の外に出て海の写真を撮りましたが、今回はあえて、見たままの光景を撮ります。

 

f:id:qmomiji:20200211065123j:image

 

お昼時だったので、ここでご飯を食べることにします。

 

レストラン街は混雑しているかと思いきや、待ち時間もなく店内に入れました。

 

「いらっしゃいませー。2名様でよろしいでしょうか

? お席、あちらのテーブル席と真ん中の2名席、あとはお座敷などもございますのでお好きなお席にどうぞー」

私とSさんは顔を見合わせ、「座敷」とほぼ同時に言いました。

見ると座敷は窓に面しており、海も、駐輪してあるバイクも見渡せたからです。

ライディングブーツ着脱の手間を考慮しても、せっかくならその席で食べたいと思いました。

 

二人で海鮮丼を注文します。

 

f:id:qmomiji:20200211070632j:image

 

そして驚きの速さで料理が運ばれてきました。

 

食べた後、軽くその後のルートを確認します。

ここから河津までは一時間弱くらいのようです。

「なんか、腹の調子悪いんすよね」

「えっ、大丈夫?」

「多分」

多分、って…。しかも、海鮮丼の大盛りを完食していたけれど、大丈夫なんでしょうか。

「具合悪かったら無理しなくてもいいんじゃない? 別にここで引き返しても」

「いや、それは負けた気がするんで行きましょう」

勝ち負けの問題なのだろうかと疑問に思いますが、本人がそう言うのでツーリングは続行となりました。

 

 

伊東マリンタウンを後にし、目指すは河津、いよいよ桜を見に行きます。