アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

マスツーリングの魅力 〜道志みち 後編

道志から宮ケ瀬への、プチマスツーリングの始まりです──。

 

眺めそのものは、見慣れた光景でした。私はいつも通り、Sさんの斜め左後方を走っています。

ですが、ミラーを確認するとヨシさんの姿が見えます。更に後ろには一徹さんの姿も。そのことが、いつもより心強く思えました。

 

路面がすっかり乾いていたからでしょうか。

朝とは比べものにならないくらい、Sさんが軽やかに走り抜けます。

私は前回Sさんと秋山を走った時同様、カーブでは無理せずにスピードを落としました。後ろから付いて来るお二人には申し訳ないとは思いましたが、自分の力量以上の運転はしないことにしているのです。

 

Sさんへの信頼もありました。

私が付いて行けずにいると、必ず減速して何処かで待ってくれているのです。

現に、カーブが続いた後の直線では必ず後方を確認していました。私だけでなく、更に続くお二人のこともこまめにチェックしています。

マスツーリングにおいて先頭を走る者は、必ず列の状態を気にかけ、そして上級者ではなく初心者のレベルに合わせた走りをしなければいけないのだと、以前Sさんが言っていました。

速すぎたら転倒や事故の恐れがありますが、遅すぎても列が詰まりスムーズな走行が出来なくなります。

恐らく、その調整をしながら走行しているのでしょう。

 

マスツーリングでのSさんの走り方を初めて目の当たりにしながら私は、確かにこれはソロとはまた違う魅力があると感じていました。

私はインカムを持っていません。なので、多くの人達と一緒に走ったとしても会話は出来ません。

でも、一緒に走るというただそれだけで、一体感が得られたのです。

思えば、『初めまして』の状態からまだ数時間しか経っていません。なのに、数年来の知己を得たような、そんな感覚になっていたのでした。

 

すれ違うバイク乗りさん達が、次々と手を振ってくれます。

私は張り切って振り返していました。

そう、『ヤエー』です。ライダー同士の独特のやり取りであるこのヤエーは、道志みちで盛んに交わされることで有名なのでした。

 

気付くと、私達4人の後ろに更に5、6台ほどのバイクが続いています。追い越していくかと思いきや、ずっと後ろに付いていました。

はからずも、10台ほどのバイクをSさんが引っ張る構図となったのです。

種類も排気量も全く違うバイク数台を怖気ることなく引っ張るその様は、かつてツーリンググループのリーダーを務め、率いた姿を彷彿とさせました。

 

 

やがて、宮ケ瀬のオギノパンに到着します。

距離にして36km、ツーリングとしては短い距離でしたが、紛うことなくマスツーリングでした。

本当に、貴重な経験をさせていただきました。

 

オギノパンの駐車場の奥には、大きめの鉄棒があります。Sさんと来た時には必ずそこで懸垂をしていることを話すと、そのメンバーで懸垂をする流れとなりました。

笑い合いながら懸垂をし、それぞれパンを買って席に着きます。

 

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思えば、4人で話しをするのはこれが初めてです。

皆さんバイク経験が豊富なため、様々なエピソードをお持ちでした。まだまだ経験の浅い私は、どのお話も興味深かったです。時に「ひえぇぇ」と悲鳴をあげ、時に笑い転げながら聞き入ります。

特にヨシさんときちんとお話ししたのはこれが初めてだったので、語り口の上手さもさることながら、持っているエピソードの面白さに、私は前のめりで聞いていました。

今までヨシさんとは文字での絡みしかなかったので、こんなに面白い方だったとはと嬉しい発見です。

 

バイク乗りの人のお話は、どの方のも面白いです。何時間でも聞いていたくなります。

ライダーは多くのことを経験しているからでしょうか。広い視野と経験値をお持ちのため、語る内容も実に豊かで深みがあると感じます。

 

三人は過去にハマったバイクに共通点があったのもあり、バイク談義に花が咲いていました。

どのバイクにも長所もあれば当然何かしらの短所もあり、どこに惹かれるかはその人次第なんだなぁと聞きながら思いました。

 

「あ、そうそう。お二人のことをブログに書いてもいいですか?」

私が聞くと、一徹さんとヨシさんが快諾してくれます。

「名前はなんて表記しましょう?」

考え込みます。

「そのまんま、アカウント名でいいですよ」

一徹さんの言葉に、ヨシさんも同意します。

確かに、頭文字をローマ字で表記するのはいずれ限界が来るのではないかと思ってました。

これからもっと多くの方と交流していき、それをこのブログに書いていくのならば、いずれ呼び名が被ってしまう時が来てしまうのでしょう。

「じゃあ、遠慮なくアカウント名で書かせてもらいますね。…でもそうなると今度は、シャドウさん一人だけが『Sさん』表記なのもおかしいのかな?」

「別にいいんじゃないです?」

隣のSさんが言います。

「それはそれで。もし誰かと被っても、注釈でも付けておけば問題ないかと」

「そうそう! そうなったら3月に出逢ったSさんとか、10月のSさんとかにすればいいんですよ」

ヨシさんが笑いながら言ったので、私も笑ってしまいました。

こういうやり取りもあったので、今回の記事でお二人のことはアカウント名で、SさんはそのままSさんと表記していくことになりました。

 

 

今後どのくらいこのブログの登場人物か増えてくれるのか、私自身にも分かりません。

この先がとても楽しみです。

 

 

「では、今日は本当にありがとうございました。思いがけずお会い出来て嬉しかったです」

私とヨシさんが堅く握手を交わしている間、一徹さんとSさんがバイクを眺めながらまだ話し込んでいました。

 

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バイクに乗り始めなければ出逢うことのなかった人達。今日のこの素敵な出逢いに感謝しようと思いました。

手を振り合い、それぞれの帰路について行きます。「またいつかお会いしましょう」と声を掛け合いながら。

 

 

「いやぁ、良き出逢いでしたね」

恒例の『反省会』でSさんと二人、今日のツーリングを振り返ります。

「だね! 初めてのマスツーも経験できたし」

私はほっとレモンで両手を温めながら同意します。

「今年の締め括りに相応しい、素敵なツーリングとなったねぇ。あ、そういえば」

少し前から気にかかっていたことを口にします。

「明日からいないんだよね? 私はどうしよっかなぁ? 箱根駅伝があるから広範囲で通行止めになっちゃうんだよね。千葉方面に挑戦する気満々だったんだけど」

そう、箱根から東京都内にかけての広範囲が通行止めになるのです。千葉方面に下道で行く場合のルートのほとんどが、駅伝のコースと被っていました。

「とりあえず、別の方向にしたらいいんじゃないですか? 秩父以外の埼玉とか」

秩父以外の埼玉…。例えばどこがお勧め?」

吉見百穴とか良かったですよ」

「よしみ…」

後でツーリングマップルで調べようと思いました。

「俺が戻って来るまで、どのくらい走行距離が伸びているのか楽しみにしてますよ」

「うわぁ…鬼教官」

でも、年末年始休業はまだ続きます。どうせなら走ったことのない所へ行ってみたい。抑えきれない気持ちの昂りを感じたのです。

 

 

そうして、私の次なる目標は埼玉県吉見町と決定しました。

それは素敵な出逢いと新たな発見、そして、確かな手応えを感じた有意義なツーリングとなったのでした。