アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

不安な走り出し〜秩父ソロツー①

12月第2週目の週末、土曜日が快晴という天気予報を受け、当然のようにツーリングの計画を立てました。

今回はソロツーリングになります。

場所はどこにしようかとツーリングマップルを見ながら考え、ふと、まだ走ったことのない方向へ行ってみたいと思ったのです。

 

東は三浦半島、西に伊豆、南は海なので走れないとして…では、次は北方面に行ってみようと思いました。北方向で比較的行きやすく、ツーリングに向いている地域として、すぐに秩父が候補に上がったのです。

 

秩父のどこを目標地点にするかを考えた時、まず、お弁当を広げられる場所がいいと思いました。秩父には楽しそうなツーリングスポットがたくさんありましたが、街中や飲食店でお弁当を食べるのは無理でしょう。

どこかそれが可能な所は知らないかとSさん聞いたところ、『美の山公園』との答えをいただいたのです。とても綺麗な場所だと聞き、そこにしようと決めました。

私は美の山公園までのルートを調べ、当日の動きも綿密に計画を立てていきます。



さて。

今回のツーリング内容を語る前に、一つだけお伝えしておかなければいけないことがあります。

実はツーリング前日の夜、事情により就寝が遅くなってしまいました。私は早起きは平気なのですが、夜は早く寝るタイプです。早めに寝ないと翌日の体調に響きます。なので前の晩、夜中に時計を見ながら『これは、明日のツーリングは中止にした方がいいなぁ』と考えたくらいです。

 

ですが当日の朝、目覚めてみると案外スッキリしていました。眠りは短くても、深くぐっすり眠れて疲れがきれいに取れる時があります。今回のもそうだったのかもしれないとその時は思いました。

ほんの少し心配はあったものの、予定通りにソロツーリングを決行することにしたのです。

 

いつものように、お弁当を詰めて準備します。

そして今回、ちょっと変わったこともやりたいと思っていました。

美の山公園には温泉施設もあり、日帰り温泉も出来るようでした。ツーリング先で温泉に入っている人もたくさんいます。私もそうしてみようと思い、温泉に入る準備もしました。

 

 

季節は冬。当然、日も短くなっています。

運転に不安があるため明るいうちに帰って来たい私は、早朝に出発しました。

 

神奈川県内を横断して国道129号線へ。

129号線を進んで16号線に入れば東京都内へ進めるようでした。129号線は何度も走っているため、私は129号線から16号線に入る、その先のルートしか下調べしていませんでした。

何の疑いもなく129号線を直進していきます。

「ん?」

最初に違和感を覚えたのは道路標識を見た時です。

129号線に入ってからはずっと真っ直ぐ進んで来たはずなのに、いつの間にか『国道246号線』の表示になっています。ですが、道路の表示が一時的に変わることはよくあることなので、そこまで深くは考えませんでした。ある区間だけが246号線で、また129号線に戻るのかもしれないと思ったのです。

 

ですが、更に突き進み海老名市に入ったことで、私はようやく道が違うことに気付きました。海老名市内に入るのは方向的におかしいからです。

どこかで地図を確認し、引き返したかったのですが、2車線大通りで中々停止できる所もありません。

かなり進んでから左折し、小道に入ってから停止して地図を見ます。

やはり、ルートを間違えていました。129号線を進むには、一度左折しなければいけなかったようです。

 

完全な下調べ不足です。

それに、国道が切り替わるのですから、分岐点では絶対に標識があった筈なのに、それも見落としてしまっていました。

少し落ち込みましたが、そうしていてもなんの解決にもなりません。

気持ちを切り替え、解決策を探します。

今いるこの小道を進んで本来のルートに戻ることも出来るようですが、それは覚えきれないほど複雑なルートになってしまいます。運転中に地図を見れないことを考えると、複雑なルートは避けたいと思いました。

先程まで走っていた246号線に戻り、129号線の分岐点まで引き返すしかなさそうです。

 

引き返し、246号線の反対車線に入ります。

ですが、反対車線はひどく渋滞していました。ほとんど車が進みません。

この時初めて、すり抜けをしたい誘惑に駆られたのです。車は止まったままな上、道路は片側2車線で車と車の間には充分な空間があります。

現に何台ものバイクがすり抜けしていきました。私がそれをしなかったのは、単に道を知らなかったからです。

急いで戻るつもりだったので、先程ルートを調べた時、129号線へ合流する交差点の名前しか調べていませんでした。いつもならやる、他の目印もその手前の交差点も、何も記憶していないのです。

もし、すり抜けをしながらその交差点をうっかり通り過ぎてしまったら、と不安だったのです。

周囲には大型トラックがたくさんあり、すり抜けをしたら標識などの見通しも悪そうでした。交差点の名前を見落とす危険性は高いと判断したのです。

とにかく私は、再び通り過ぎるような真似はしたくありませでした。

「こういう時、ナビがあればなぁ」

この時初めてそれを痛感しました。

ナビがあれば、そもそも129号線から外れることもなかったのでしょうが、万一外れたのだとしても、渋滞を避けた複雑なルートをナビの誘導を受けながら走ることが出来ました。

ナビを持たない者にとって、事前に調べたルートを外れることは、大きな不安と危険性を伴います。一度も走ったことのない、知らない道ならば尚のことそうです。

 

渋滞に引っかかりながらもなんとか進んでいくと、警察車両が止まっており、警察の方が片側通行の整備をしていました。その向こう側に、大破したワゴン車が見えます。どうやら事故があったせいで渋滞していたようです。

脇を通り抜ける際、フロントガラスが砕け機械が剥き出しにされたワゴン車の、無惨な姿を目に焼き付けました。

──私も気を付けよう。

そう思いました。

 

結局、129号線に戻るまでに40分近くかかりました。間違えたルートを走ったのが20分、戻るのに40分、合計一時間もロスしてしまったことになります。

せっかく早朝に家を出たのに、まだ神奈川県内を抜けてすらいない地点で足止めされてしまいました。

私は焦りとじれったさから、軽く唇を噛みます。

この日の日没時間は16時36分。そこまで調べた上で、ちゃんと明るいうちに帰宅出来るよう綿密に計画を立てていたのです。

余裕を持って出た筈でした。ですが、リミットまでの時間を逆算し、更に焦ってしまいます。

 

 

129号線を走り進めながら思いました。

今回のツーリングは今までと何かが違う、と。

何が違うのかは分かりません。

ですが、以前熱海で迷った時には、迷ったことそのものを楽しめました。でも今回は全く楽しめなかったのです。私は間違えて戻った時間を完全に無駄な時間と捉えていました。

それはどんな理由があるからなのか、そして今回のツーリングがどうなっていくのか。

この時の私には知る由もありませんでした。

 

まして、このツーリングでのトラブルが、これに留まらなかったということも──。