アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

チャレンジのいろは〜栃木、福島連泊ロンツー③

大笹牧場を後にして走り出すと、山あいの向こう側から白い靄(もや)が発生しています。

霧が濃いなぁと思い見てましたが、よく観察するとそれは雲のようでした。

雲海が出来つつあります。それはそれで美しい光景でした。

先程までくっきりと景色が見れていましたが、沸き起こる雲たちが波のように流れています。

 

 

『栗山日光線』のワインディングを爽快に走り進めます。

山を下りきって県道247号線に合流する交差点に差しかかるや、驚きの声を上げることに。

「えっ、マジでか…」

 

青信号にも関わらず、合流する道の向こう側がひどく渋滞しているため全く進めないのです。

 

 

日光は混んでいる──。

それは聞いてはいたのですが、まさかここまでとは思いませんでした。

 

お盆休みの真っ只中、普通に考えれば混雑は当たり前なのですが、今年は新型コロナウィルスの影響もあり、どうなっているのか予想が付かなかったのです。

例年ならば大渋滞するという高速道路もスムーズに走行出来ていたのもあり、一種の賭けで日光の街中までやって来ました。

でもやはり、人気の観光地は変わりない混雑ぶりなようでした。

 

前が詰まっているため動きたくても動けず、なのに容赦なく夏の陽射しは照りつけます。

停車とノロノロ運転との繰り返しに、バイクのエンジン熱がブーツやパンツの布越しに伝わってきました。

「暑い…。とにかく走りたい」

でも耐えるしかありません。

免許取得後の初めての夏──。

この時私は、真夏のバイクの過酷さを痛感したのです。

 

 

ですが混雑もその筈で、そこはかの有名な『日光東照宮』のすぐそば。

世界遺産にもなっているほどの寺院です。

世が世なので外国人観光客こそいないのでしょうが、やはりこの連休で全国から押し寄せて来る人達は多いのかもしれません。

 

もし空いていたら東照宮を見たいと思っていましたが、その混雑ぶりからそれは諦め先へと進みます。

 

 

なんとか渋滞を抜け122号線を更に進み、『細尾大谷橋』を直進するや国道120号線に変わりました。

ここで対向車線が見えなくなります。

対向車、つまり下りの車は別のルートを走るのです。

大きくカーブして山を登っていきます。標識には『い』の文字が。

 

 

そう、『いろは坂』の始まりです。

 

 

いろは坂』とは。
日光市街と中禅寺湖・奥日光を結ぶ観光道路です。
下り専用の第一いろは坂と上り専用の第二いろは坂の二つの坂を合計すると48か所もの急カーブがあることから「いろは48文字」にたとえてこの名がつきました。
カーブごとに「い」「ろ」「は」・・・の看板が表示される急坂が続きます。

 

道そのものは普通の山道なのですが、上りと下りでルートがわかれ対向車もなく片側二車線なことにより、逆にゆったりとした気持ちで運転することが出来ました。

私の運転がたとえ遅くとも、隣の車線から追い抜いてもらえるのです。

 

いろは坂は、交通量はそこそこあるものの、片側二車線の走りやすい山道──。

 

この時私が抱いたいろは坂への印象は、ただそれだけでした。

 

 

明智平展望台』でバイクを駐輪して休憩を取ります。

 

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男体山が望めました。

ロープウェイに乗っている人達が、満面の笑みで手を振ってくれます。

 

売店があったので、またもここで腹ごしらえです。

 

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名物だという明智だんごも気になりますが、えびの湯葉巻きも捨て難く…。

私にはどちらかを選ぶことなど出来ず、両方食べることにしました。

 

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明智だんごは大きめお餅に甘辛の醤油たれが付いており、表面の焼き目を噛み進めると柔らかさと醤油の旨味が口に広がりました。

えびの湯葉巻きは焼き上げた湯葉の風味と、えびのプリプリとした食感が絶妙にマッチしています。

 

 

ご満悦で食べ終えるや、この先のルートを確認します。

 

華厳の滝』を見たいと思っていたのですが、交通情報によるとその近辺の道もひどく渋滞しているようでした。

滝は昨日ヨシさんの案内でたくさん見たので、辞めておくことにします。

その奥にある中禅寺湖と、戦場ヶ原を目指すことに決めました。

 

走り進めると中禅寺湖が右手に見えて来ます。

県道250号線もなだらかなワインディングの楽しい道でした。

山を上っていき、やがて『中禅寺湖展望台』に到着しました。

 

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高台にあるため、涼しく心地よい風が吹いています。

 

戦場ヶ原は日光国立公園内にある高層湿原です。

広く真っ直ぐな道のすぐ脇に湿原が広がっていました。

背の低い植物が松の木のように生い茂っていたので、立ち乗りでそれを眺めながら走り進めます。

 

 

 

引き返し、再びのいろは坂

今度は下りルートです。

 

上りと同じような道なのだろうとたかを括っていましたが、最初のカーブで驚愕しました。

 

それは完全なるヘアピンカーブだったのです。

曲がりきれずガードレールを突き破りでもしたら、断崖から真っ逆さま。まず無事では済まないでしょう。

勾配もキツいため、エンジンブレーキをしっかり利かせ、リアブレーキも踏みながら進まなければたちまち加速してしまいます。

 

ですが何より怖いのは、その交通量でした。

もっと激しい峠道はたくさんあるのでしょうが、いろは坂は日本有数の観光道路であるため、他の車も至近距離でたくさん走っています。

 

もしこの急カーブで転倒でもしようものなら、真後の車から轢かれてしまう恐れもありました。

 

 

幸い、二車線分はある道幅に、車線が引かれていません。

前の車が道幅いっぱい使ってカーブを曲がっていたので、私もそれに倣うことにしました。

左カーブ、右カーブと、カーブが来る度慎重に運転します。

緊張のあまりグリップを握る掌に力がこもっていたので、意識してリラックスさせました。

 

もう何回目なのか分からなくなる程のカーブを曲がりきった直後、後ろから来たバイクが追い越して行きました。

 

凄いなぁ。よくこんな道で追い越していけるな。

 

そう感心しましたが、よく見たら周囲の車もスピードを上げ始めています。

直線が続いたことにより、ようやく私も悟ったのです。

 

終わった。

無事終わったんだ、いろは坂の下りカーブが。

 

 

安堵するとともに、一種の達成感がありました。