アクセルグリップ握りしめ

オフロードバイク、セローと共に成長していく、初心者ライダー奮闘記

苺100%〜近場の冒険 前編

長年、苺狩りへの憧れがありました。

子供の頃から一度も連れて行って貰ったことがなく、結婚してからも機会に恵まれなかったからでしょう。

 

というのも、農園は駅から離れている所ばかりで、車を持たない我が家は、行くとなるとバスやタクシーを駆使して向かわなければいけません。

その手間と掛かるお金プラス、面倒くさがって不機嫌になる家族を宥め、気を使ってまで連れ出す気力がどうしても持てず、今までその機会を逃してきたのです。

 

でも、今ならバイクがあります。

行こうと思えば一人ででもサッと行くことが出来るのです。

でも、一人で行く…? 苺狩りに?

基本、どこへでも一人で行く私ですが、さすがにフルーツ狩りともなると気が引けました。

こういう時、誘える友達は一人しか思い浮かびません。

 

ですが。

 

「そんな乙女チックなものは行けませんよ」

Sさんからの意外な返しがきます。

「え、乙女チック? …って、どこが?」

「苺って時点で、なんか女子力の塊みたいじゃないですか」

果物の種類の問題なの?

みかん狩りなら行くとのことなので調べてみましたが、残念ながらみかん狩りのシーズンは過ぎてしまっていました。

お互い、週末の都合はついていて天気も快晴。

でも私は苺狩りにどうしても行きたく、対してSさんは乗り気ではない模様。

「やめとく? どうしても抵抗があるなら一人ででも行くけど」

「まぁ、付き合いますよ」

「おぉ、ありがとう!」

 

そういうわけで。

2月半ばの週末に、苺狩りを決行する運びとなったのです。

私は早速二人分の予約を取り、バイク2台で向かうことも農園の方にお伝えしました。

 

当日の朝、待ち合わせ場所で落ち合うや、苺農園までの道順をざっと説明します。

「そうですか。じゃあ、お願いします」

Sさんがジェスチャーで、前を走るよう伝えながらそう言ってきました。

そ、そうか…。

イベントを発案、企画した人が先導を務める、というのが暗黙のルールでした。

自分から言い出したので道順は調べてあるのですが、やっぱり先頭を走るのは緊張します。

 

 

Sさんの前を走りました。

ですが、しばらく細い道を進んで行くや、一時停止ラインで停止して後ろを振り返ります。

「ねぇねぇ。ここから先、オフロードみたい」

そうなんです。

私が調べたルートでは、そこを真っ直ぐ突っ切ればすぐの筈でしたが、その道が途中から未舗装のあぜ道となっていたのです。

「お、進みます? 俺は全然いいですよ」

オフロードバイクの私はともかく、Sさんがそう言ったのでそのままあぜ道を突き進みます。

 

田んぼの真ん中を走る、細くガタガタのあぜ道。

運転を過って転倒すれば、忽ち両脇の田んぼに倒れ込んでしまいます。

その不安定な運転感覚とスリルとが相俟って、またも笑いながら走り抜けました。

舗装路に出て停止するや、

「笑いすぎて涙出ちゃった」

と涙を拭い、Sさんから呆れられました。

 

 

そうして到着した苺農園。

早速受付をすませ、ビニールハウスの中へと入ります。

見渡す限りの苺に、一気にテンションが上がりました。

 

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大粒の完熟苺。

もぎ取って口に入れるや、甘酸っぱさが広がり、じんわりと幸せな気分に浸ります。

「あぁ〜、幸せだぁ」

その後は夢中で食べ続けました。

最初のうちこそSさんとお喋りしながら隣で食べていたのですが、次第に苺のある所ある所へと移動しながら食べているうちに、一人で黙々と食べ続けていたのです。

ふと正気に戻って振り返ると、私の通った場所から赤い苺の姿は消えていました。食べ尽くす勢いで進んできてしまったようです。

Sさんは既に飽きたのか、携帯電話を弄っています。

「ねぇ、あと何分だろう?」

Sさんに声を掛けます。

制限時間は30分なのです。

腕時計は付けているのですが、手が苺まみれで袖をめくれません。

「あと10分くらいですね」

Sさんが携帯画面を見ながら教えてくれます。

「もう行きますか?」

「えっ、なんでよ?」

「いや、食べ飽きたんじゃないかと」

「まだ全然だよ!」

確かに周囲を見渡すと、苺狩り開始から15分ほど経過したあたりで食べ飽きて話し出す人達や、遊び始める子供達も目立つようになりました。

でも、私は長年の憧れがようやく実現出来たという喜びもあり、好物を堪能し続けたのです。

そんな私にSさんが、

「食べ過ぎじゃないですかね?」

と呆れ顔でした。

 

制限時間ギリギリまで食べ続け、ビニールハウスの外に出るや、トレーに集まった苺のヘタを廃棄します。

私のヘタは満杯でしたが、Sさんのそれは半分にも満たない量でした。

 

「あぁ〜、美味しかった!」

すっかり満足した私は、今日の目的は果たしたとばかりにセローの元へと戻ります。

 

 

さて、この後はどうする? という流れになりました。

苺狩り開始時刻は9時からでした。たった30分で終わったので、まだ朝の9時半過ぎです。

せっかくバイクに乗る格好で出てきましたし、今日の予定も空いているので、もっと遊びたい気持ちはあります。

ですが、なにも思い付きませんでした。

誘っておいて申し訳ないのですが、今後の予定は完全なノープラン。

いつものように、Sさんに任せてしまいました。

 

 

とりあえず、近くに大きな公園があるとのことなので移動しました。

公園の駐輪スペースにバイクを停めるや、キャリアボックスから大きなぬいぐるみを取り出すSさん。

わざわざ持って来たようです。

積載出来るスペースが制限されているバイクで、わざわざ持って来るというその遊び心が、なんとも馬鹿らしくも面白いと感じました。

 

公園内を散策すると、桜が咲いています。

 

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まだ2月の半ば、思いがけずお花見が出来た幸運を喜びながら、ノリノリで写真を撮ります。

公園の筋トレ器具で懸垂をし、ひとしきり運動をして公園を後にしました。

 

近くのショッピングモールに移動して、昼食にします。あれほど苺を食べたというのに、既に空腹でした。

 

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牛炙りステーキ丼を食べます。

 

その後、春用のバイク衣料を買ったり、Sさんの希望でボウリングをしたりしましたが、その間トイレの頻度が多かったです。

苺の水分のせいでしょう。

30分に一回はトイレに行く私を見て、

「今日頻尿じゃないですか?」

とSさんが笑います。

 

でもよく考えてみたら笑い事ではありません。

苺狩りの後、ロングツーリングに行こうかという案もあったのです。もしそうしていたら、大変なことになるところでした。

苺の、というより果物の成分のほとんどは水分なのだという当たり前のことに思い至ったのです。

延々と食べ続けてしまったら、それだけ摂取する水分量も多くなってしまいます。

 

この先、ロングツーリング先でフルーツ狩りすることもあるかもしれません。

その際は、食べる量やその後のトイレ休憩の場所とその頻度も、ちゃんと考慮しなければいけないのでしょう。

 

それでも、初めて食べたもぎたて苺の美味しさに、この日一日テンションが上がりっぱなしなのでした。